2025-9-7 アージリスの未成熟=成熟理論

クリス・アージリスはマズローのいう自己実現の欲求に着目して、「人はもともと自己実現を目指す生き物であり、未成熟から成熟に向かおうとする欲求を持っている」と考えた。彼によれば、科学的管理法や官僚型組織といった効率重視の組織運用はメンバーに「未成熟な特質」を要求することになり、成熟を求める個人のモチベーションを低下させる。

あくまで個人の欲求について論じたマズローに対し、モチベーションを組織行動に展開して考察した点で意義深い研究である。彼は「モチベーション理論の父」と呼ばれることもある。

ちなみにアージリスの「未成熟・成熟」の定義は次のようなものである。他者に依存し、目先の損得に振り回される「未成熟な人」が想像できる。

<未成熟>    <成熟>

受動的行動 → 能動的行動

依存的   → 自律的

単純な行動 → 多様な行動

浅い関心  → 深い関心

短期的展望 → 長期的展望

従属的地位 → 対等・優越的な地位

自覚の欠如 → 自覚と自己統制

アージリスは、メンバーの自己実現欲求を満たし、成熟した個人を増やせば組織は活性化し、利益も増えるので、従業員への投資は有益だと主張した。具体的な施策として以下のようなものを提唱している。

・職務拡大・・・職務の構成要素となる作業の数を増やして仕事の範囲を拡大する。人は同じことばかりやっていると飽きて作業効率が落ちるので、仕事の幅を広げて変化を与えようというものである。

・参加型リーダーシップ・・・上位者が一方的に命令するのではなく、メンバーにも一定の決定権を与える。

・感受性訓練・・・メンバーに対人的な共感性を高める訓練を施す。具体的には個人を母集団から切り離し、意識的に孤独な場面を作り出すことで、参加者の集団参加意欲を掻き立てるものだったらしい。現代のわれわれから見ると、少し荒っぽい感じはする。