2025-10-12 SL理論
「Situational Leadership Theory(状況対応型リーダーシップ理論)」の略。アメリカの行動学者ポール・ハーシーと経営コンサルタントのケネス・ブランチャードが体系化した。名前からわかる通り、「全ての状況に適応できる普遍的なリーダーシップは存在しない」という命題を前提とする、コンティンジェンシー(状況適合)理論の一つである。
SL理論は、社員の習熟度を「能力」と「コミットメント」の2軸で評価し、4つのグループに分類したうえで、それぞれに対して適切なリーダーシップのモデルを適用する。
・教示型・・・トップダウンで一方的に指示を出すスタイル。能力もコミットメントもともに低いメンバーに用いる。
・説得型・・・最終的に意思決定は行うが、それをメンバーに説得して理解を得ようとするスタイル。能力は低いがコミットメントは高いメンバーに用いる。
・参加型・・・自分一人でなく、メンバーと一緒に意思決定を行うスタイル。能力は高いがコミットメントが低いメンバーに用いる。
・委任型・・・意思決定ややり方を含めてほとんどメンバーに任せてしまうスタイル。能力もコミットメントもともに高いメンバーに用いる。
フィードラーが「リーダーのタイプは変えられない」と考えたのに対し、パス・ゴール理論とSL理論では状況に応じてリーダー自身が変化することが前提になる。SL理論を使おうとすると、リーダーは一つのチームの中で様々な顔を使い分けなければならない。相手によって鬼軍曹や物わかりの良い上司を演じ分けるのは上司にとって相当ハードルが高い。
また、メンバーの側から見れば、こうした対応は「えこひいき」に他ならない。「なんで俺だけ箸の上げ下ろしまで指示されなければならないのか」という声は必ず出る。よしんばリーダーからメンバーに対しSL理論を用いる意図を伝えられていたとしても、今度は「ああ俺は能力が低いと思われているのか」と評価に対する不平不満が出かねない。
したがってこの理論は、「メンバーが自らの評価に納得し、かつ、この理論を適用する目的を共有している」という状態でないと現場への適用が難しい。新入社員教育や、明らかに貢献意識の低い部下への指導など、ある程度限定された状態で用いるのが無難であろう。

