2025-10-13 変革型リーダーシップ

アメリカの政治学者J・M・バーンズは、ガンジーやケネディといった時代の節目で変革を起こす、突出したリーダーの事例を研究するなかで、それまでの社会心理学的な実験研究から導き出されたリーダーシップとは異なる「変革型リーダーシップ」を提唱した。

バーンズによれば、リーダーシップは次の2種類に分けることができる。

・交換型リーダーシップ・・・リーダーに協力する対価として何らかの報酬を与えることにより影響力を行使するもの。

・変革型リーダーシップ・・・崇高な理念や高いモラルに対する人々の無条件な貢献が基盤となって影響力を行使するもの。

交換型リーダーシップは集団の置かれた環境が比較的安定している場合には有効に機能するが、大きな環境変化や価値観の揺らぎが生じた場合にはメンバーの期待に応えられなくなる。変革型リーダーはメンバーの内面に生じた潜在的な欲求をくみ取り、新たなビジョンや行動指針を示すことで、組織に好ましい結果をもたらすものと考えられる。

バーナード・バスはバーンズの研究を踏まえ、変革型リーダーシップの具体的な因子を明らかにしようとした。ティシーとディバナは変革型リーダーが果たすべき役割を「ビジョンの提示」と喝破し、変革に至る行動プロセスを示した。コッターはリーダーシップをマネジメントと切り分けて定義することで、そもそもリーダーに求められるのは現状を変える能力だと主張した。

弁舌さわやかに人々を導くリーダーを想起させるという意味で、いかにもアメリカ人好みの理論である。また、プリミティブなリーダーシップ論である「資質特性論(リーダーシップって、結局素質でしょ)」に先祖返りしている感もある。しかしながら、変革の必要性が叫ばれる時代に、その能力を持った人材になる、あるいはそういう人材を育てるための一つの指針にはなる。