2025-10-17 組織学習
組織学習は、組織あるいはその構成員が新たな知識を獲得し、蓄積し、共有するためのあらゆる活動、またはそのプロセス全体を指す。組織がそれぞれ固有の目的に向かって成果をあげ、さらに成長していくためには不可欠なメカニズムである。組織文化は自然発生的に生じる部分もあるが、その多くは組織学習の成果として根づいたものと考えることができる。
組織学習にはシングルループ学習とダブルループ学習がある。シングルループ学習とは、既存の制約条件や枠組みの中で行う学習活動であり、過去の成功体験に基づいて「正しく物事を行う」ことに焦点を当てる。したがって、作業をより効率的に行うとか、誤りの修正を行うといった活動が中心となる。
一方のダブルループ学習は、今ある枠組み自体を見直し、新たな価値観やアプローチを取り入れることを目指す。こちらは「正しいことを行う」というのがテーマになる。
組織がある程度安定した状態にあり、漸進的な改善の積み重ねで進化している状況ではシングルループ学習が選択される。こうした環境下では既存のルーティーンを維持強化することが合理的な選択になるからである。しかしながらいったん組織が危機に瀕し、新たな戦略や体制が必要になると、不連続な変化を起こすためのダブルループ学習が要求される。組織はサイクルの長短こそあれ、この「漸進的進化」と「革新的変化」の2つのフェイズを交互に繰り返すものである。
なお、シングルループ学習を「低次学習」、ダブルループ学習を「高次学習」と言うことがあるが、個人的にはあまり好きな呼び方ではない。学習に高いも低いもなく、その時の状況に応じて求められるものが違うだけである。シングルループ学習が「低次」ということになると、例えば「技能」レベルの熟練やPDCAサイクルもレベルが低い活動だと誤解されかねない。

