2021-10-21 組織変革への抵抗(認知面)
組織変革に抵抗が生じる理由について、組織が環境変化を認知するプロセスの面から考察する。
・情報の排除・・・組織は内外の環境変化に関する情報を収集し、処理するプロセスを何らかのルールや手続きとして有している。しかしこれらの仕事もいわばルーティンであり、基本的には既存の業務を管理・運営するために最適化されている。したがって、既存業務に直接関係のない情報やデータは、たとえそれが組織変革の必要性を示すシグナルであったとしても、ノイズとして排除されてしまうケースがある。
・有能性のわな・・・組織が十分効率的に運営されており、メンバーや利害関係者の満足水準を超える成果をあげている場合、あえて現在の戦略やルーティンよりも優れたものを探索し、取り入れようとする動機は失われる。言い換えれば現在のやり方が最善であるという思い込みで、何かを変えようという意識そのものが生じないケースである。これが「有能性のわな」と呼ばれる現象で、ドラッカーの「柔道戦略」やクリステンセンの「イノベーションのジレンマ」において、後発企業がリーダー企業を駆逐する戦略を実行する際の前提条件の一つとされている。
両方のケースに共通する示唆は、組織が比較的安定した状態に置かれている場合、あえて変革の機運を醸成することの難しさである。現実の世界でも、多くの場合、大胆な組織変革は危機的な状況のもとでしか行われない。

