2025-10-24 組織変革案の創出

外部の「生の情報」に触れることで組織の課題を認識することができたら、次はその課題に対して具体的な変革案を創出しなければならない。このフェイズでは、たとえ問題意識の発信元が権限を持つトップだったとしても、一人で考え実行に移すのはお勧めできない。どんなに優秀な人間でも、自らの認知の枠組みや思考パターンを超えて発想することは難しい。

ある組織に必要な変革案は、その組織に関係のある人たちのコミュニケーションによってしか生まれない。ファシリテーターやアドバイザーとして外部の人間を起用することは差し支えないが、基本はその組織を愛し、何とかよくしたいと願う人たちを集めて話し合うことである。借り物でない、自分たちの組織のためだけのアイデアを出し合うプロセスそのものが変革の一部だと言うこともできる。

組織変革のプロジェクトチームやタスクフォース運用の留意点は以下のようなものである。

・メンバーの多様性・・・同じようなものの見方をする人たちばかりではシングルループ学習に陥ってしまう恐れがある。異なる経歴や専門分野を持つ多様な人材を集めることで、情報の多義性が増幅され、従来の認知枠組みを超えたアイデアが出やすい環境を作る。

・フェイス・トゥ・フェイス・・・コミュニケーションは五感の全てを使う「知覚」であり、言葉によって伝わる情報はほんの一部である。インスピレーションを得るための集まりであるから、直接ひざを突き合わせての議論が望ましい。

・心理的安全性・・・場の空気を読んだり、誰かに忖度するような会議であればやる意味はない。「ここでは何を言っても大丈夫」という安心感をメンバー全員が実感できている状態を作らねばならない。筆者は昔、そういう前提だったはずの会議での発言を上司にリークされ、後で主催者から「会社にオフレコなんかあるはずないだろう」とうそぶかれたことがある。こういう組織では、表面的な再編などはできたとしても、本当の意味での組織変革はおぼつかない。

・正当性の確保・・・こういう会議体が設置された時点ですでに抵抗勢力は発生している。これはオーソライズされたチームであり、トップマネジメントの支援を受けているのだという正式な旗印が必要である。

・前提情報の共有・・・新たに入手した生の情報だけでなく、組織全体に関する知識や情報を、議論の前提として共有しておく必要がある。メンバー一人ひとりの専門性が違うだけに、情報が頭ぞろえされていない状態で議論を始めると収拾がつかなくなる。