2025-10-30 成果主義
賃金や賞与、昇格などの処遇について、仕事の成果をもとに決定する考え方。その人が持つ潜在的な能力や可能性ではなく、あくまで具現化された成果にフォーカスするという意味で、能力主義とは区別される。
かつて日本企業の強みの源泉であった職能主義的人事制度は、年功的な運用に陥りがちであり、パフォーマンスのわりに人件費の高い中高年層の増大を招いた。成果主義は賃金や賞与の「成果に対する対価」という一面を強調し、人件費の抑制を図りつつ、従業員のモチベーションを高めようとする施策である。日本企業の国際競争力が低下した1990年代以降、多くの企業が(そう言ったかどうか別として)コスト削減を目的に導入した。
もっとも、成果主義の導入が成功し、現在に至るまで人事はこれ一本でやっている、という企業はあまり多くない。その理由は以下のようなものである。
・中長期的な課題への取り組みがおろそかになる・・・成果主義を評価する時間軸はたいてい1年かそこらである。今期も来期も評価の対象にならないのでは、時間のかかる課題に取り組む意欲は失せる。
・メンバーの協働意識が低下する・・・とにかく自分が成果をあげれば他人はどうでもいい、という個人主義に陥る。協力しなければ成果の出ない課題を与える、というやり方もあるが、「自分の給料が他人に左右されるのはどうか」という理由で、そもそも目標からオミットされるケースが多い。大したことはしていないのに成果だけを強調するスタンドプレーに走る部下も出てくる。
・成果が外部環境に左右される・・・好況時には特に何もしなくても目標を達成してしまうし、不況時には何をやってもダメ、といったことが頻発する。さすがにそれでいいのか、という話にはなる。
・公正な評価が難しい・・・部署や個人の役割によっては成果を測る尺度が難しい。成果の定量化が比較的容易な営業や製造に対し、例えば管理部門に極端な評価がなじむのか、といった問題である。筆者が所属していた会社でも、間接部門のスタッフの評価は「中の上」くらいに集中するのが常であった。業績のいいときには間接部門から、悪いときには現業部門から、それぞれ不満の声が聞かれたものである。

