2025-11-2 採用活動

企業が 事業活動を継続・発展させるために必要な人材を「社外から」確保するための一連の活動を指す。具体的には以下のような手順で行われる。

・採用計画の策定・・・要員計画に基づきどのような人材が何人必要かを明らかにし、採用の手順やスケジュールを決定する。

・母集団形成・・・候補者を集めるために、学校訪問や広報活動、求人の告知などを行う。最近はこのプロセスの一環として、「インターンシップ」が行わることが多いが、これは希望者が入社前に一定期間の就業体験をして、その企業が自らの専攻や将来のキャリアビジョンに合っているかどうかを確認しようとするものである。企業の側にとっても、候補者に関する情報が増え、選考時のミスマッチを防げるというメリットがある。

・選考・・・候補者の適性を見極めるために面接や試験を行う。

・内定者フォロー・・・内定後の候補者との関係構築や、入社準備のサポートを行う。

日本では長年、新規学卒者を春季に一括採用する形態が一般的であった。これは、学生や学校にとっては就職活動を計画的に行うための、企業にとっては採用活動を効率的に行うための、双方の都合が合致した結果として長年続く慣行となった。

選考においては、専門性よりも社会人としての基礎的な資質が重視される傾向が強かったが、これは企業が入社後の教育訓練や人事異動により、幅広い職務遂行能力を重視する「ゼネラリスト」の養成を念頭に置いていたからである。日本の人事制度の特徴である職能主義や終身雇用制度と対をなす採用基準であったと言える。

近年の経営環境や労働市場の変化、特に少子化や働き方の多様化に伴い、日本の採用活動には次のような変化が生じている。

・中途採用、通年採用の定着・・・2024年には日本で初めて、中途採用者が半数を超えて新卒採用者を上回った。2025年にはその差はさらに拡大している。これは、学生や若手社会人の意識の中で間で転職に対するハードルが下がり、むしろキャリアのステップであるという考え方が強まっていることが大きい。マッチングサイトや転職支援サービスなど、労働市場の流動化を支える各種のインフラが整備されてきたことも背景にある。逆に言えば、企業はせっかくコストをかけて採用した人材が短期間で離職してしまわないよう、何らかの手立てを講じる必要に迫られている。なお、欧米企業にはもともとある時期に一括採用するという意識はあまりなく、欠員を随時募集する通年採用労働が一般的である。

・職種別採用の増加・・・採用区分をいくつかの特定職種に分けて行い、入社後に就くべき仕事が既に決定されているものである。入社希望者の意識が「就社」から「キャリア形成」に変化し、企業の側でも現場の即戦力ニーズが高まっていることが背景にある。採用活動の対象として、修士や博士課程の修了者や、高専卒業者を見直そうとする動きも、こうした流れに沿ったものと言える。

・就職活動の早期化・長期化・・・空前の「売り手市場」となったバブル経済期と、その反動による就職氷河期など、1990年代以降のさまざまな動きを経て、1997年に企業と学校の紳士協定であった「就職協定」が廃止された。これにより、就職活動の時期的な縛りがなくなり、企業、学生ともに「早くから活動しなければ勝ち抜けない」という意識が高まって、就職活動の早期化・長期化が加速した。

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