2025-11-3 人事異動

企業における人事異動は、大きく垂直的異動と水平的異動に分けられる。筆者は以下に記載した異動形態のうち、「転籍」以外のすべてを経験したことがある。

<垂直的異動>

・昇進-降職・・・職務主義における役職の上昇・下降。組織として必要なポストに人を充てるものであるから、降職も普通に行われるのが原則である。

・昇格-降格・・・職能主義における資格の上昇・下降。降格は「その人個人の能力が低下した」ということになるから、病気とか不祥事でもない限り起らない。

<水平的異動>

・配置転換・・・これまでと異なる職種に異動する「職種転換」や、同一職種内で勤務場所が変わる「勤務地転換」がある。後述するように配置転換にはそれなりのメリットもあるのだが、働き方の多様化に伴い、近年はこうした異動を望まない社員も増えている。こうした動きへの対応としては、職種については「複線型人事(専門職コース)」が、勤務地については「地域限定社員制度」が導入されるケースが多い。

・出向・転籍・・・別の会社の指揮命令を受けて働くことを前提に企業間を異動すること。異動元の企業と雇用関係を維持したままであれば「出向」、異動元を退職し異動先と新たに雇用関係を結ぶのであれば「転籍」と呼ばれる。

人事異動の目的としては、以下のようなものが考えられる。

・個人の能力開発・・・別の職務経験を積ませることによる能力開発、あるいは適性の見極めを行うため。同じ仕事を続ければ専門性は高まるが、どうしてもマンネリになるし視野も広がらない。

・組織の活性化・・・組織も同様に、ずっと同じメンバーだと、視座や業務プロセスが硬直化する。

・人的資源の再配分・・・部署による業務の繁閑や、個人の変化(習熟度が上がったり、年を取ったりすること)による凸凹を均すための異動。

・環境変化への対応・・・社内外の環境変化による事業の多角化、再編、合理化、技術革新等に適応するための異動。

・昇進・降職・昇級・降級人事に伴う異動・・・「人の事情」が先にある異動。

組織に所属するビジネスマンにとって、人事異動は最大の関心事の一つであり、飲み会でのおいしい「つまみ」でもある。異動の予測や背景の解説をしてくれる「影の人事部長」もそこここに存在する。ただ、一定以上の地位に立ってから覗いてみると、そうした噂話がそのまま真実であるケースはあまり多くない。組織にはどこかに安全装置のようなものがあり、あからさまな好き嫌いや情実だけで行われる異動などというものは、やはり通らないようにできているものである。