2025-11-4 ジョブ・ローテーション

従業員に一つの職務だけでなく、他のいくつかの職務を定期的、計画的、長期的に経験させること。目的は以下の通りである。

・ゼネラリストの育成・・・複数の職務を経験させることにより、幅広い知識やスキルが習得できる。組織全体の業務を俯瞰する視座が身につき、セクショナリズムに囚われない人材が育つ。ジョブローテーションを幹部候補生の選抜教育として採用している企業も多い。

・従業員の適性見極め・・・ジョブローテーションで配置された部署をきっかけに、それまで見えなかった従業員の能力が発揮されるケースがある。ひとつの職場だけで囲い込んでしまうと、従業員の潜在能力を見逃してしまうことがあるため、早いうちに適性を見極める目的で実施される。

・組織の活性化・・・組織にマンネリズムが生じており、士気が沈滞しているときなどに、ジョブローテーションで活性化を図ることがある。動く人も、受け入れる組織も、それなりの刺激は受ける。

ジョブローテーションは「その会社に最適化された」人材を育成するためのシステムであるため、スキルの専門性を前提とする欧米式の職務主義とは相容れない。個人の側としても、転職時履歴書に記載できる「ポータブルスキル」は身に付かない。したがって、どちらの側にとっても「転職の可能性が低い」ことが実施の条件になる。

筆者の所属していた企業では、ごく短い期間を除き、育成や適性見極めのためのジョブローテーションは実施されていなかった。ジョブローテーションは中小企業診断士の二次試験では事例Ⅰの定番だが、現実問題としては、ある程度人的資源に余裕のある大企業でないと難しいのかもしれない。

最近では上場企業において、出世競争を勝ち抜いたトップマネジメント(例えば執行役員や取締役)が、管掌する職務を短期間で交代することがあるが、これは株主に対し役員の経験や専門性を公開する(役員としての正当性を示す)義務があるためで、ジョブローテーションとは少し意味合いが異なる。

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