2026-4-16 FoE(愛される企業)
Firms of Endearment。「愛される企業」と訳される。シソーディア、シェス、ウォルフによる同名の著書のタイトルからきた言葉である。人は自分が応援したい企業の顧客や株主になりたがり、また愛着を持てる組織に所属したいと願う。世界中で高収益を上げている企業は、実はそうした「人の心に響く」経営を実践しているのだ、というのが本のざっくりした主張であり、FoEはその中で示されている72社、あるいはそれらと共通の特徴を持つ企業のことを指す。
シソーディアらが主張するFoEの本質は、日本人の言う「利他の心」であろう。自社の利益が第一、ではなく、全てのステークホルダーに配慮し、時には自己犠牲も厭わない行動規範である。その特徴をざっとまとめると以下のようになる。
・人件費が高い。給与水準だけでなく社員教育にも時間とお金をかける。
・サプライヤーを下請けではなくパートナーと認識し、ともに成長する。
・顧客や従業員、地域社会と「情緒的な絆」で結ばれている。
・離職率が低い。
・目標が長期的である。
考えてみれば当然のことである。顧客をファン化したい、自社のブランドを価格競争とは無縁の高みにのぼらせたい、と願うなら、まず自分自身が正しいふるまいをしているか、という自省がなにより先にくるべきである。このステップなしにうわべだけの言葉で人を動かそうとするから、マーケティングの仕事はうさん臭いものだと思われてしまう。
もっとも、「高収益企業を調べたら共通の特徴があった。だからこの特徴をまねれば高収益になる」という論法にはにわかに同意しがたい。「高収益はそれぞれの優れたビジネスモデルの結果であり、得られた高収益が立派なふるまいを可能にしている」という解釈もできるからである。資金繰りに苦しむ中小企業に「愛されるためにまず人材投資を増やしましょう」と助言するのは明らかに間違っている。
それでも、企業は結局、誰かのために役立って対価をいただく存在であり、また人を生かしやりがいを与える存在だ、ということを、毎日悩みが尽きない企業経営者の皆様にも時々は思い出してほしい。

