2026-4-28 顧客価値②
顧客価値は顧客が得るもの(便益=ベネフィット)と顧客が失うもの(コスト)の比であるとも考えられる。バリューエンジニアリング(VE)の考え方を援用すると「価値=便益/コスト」と言うことになり、顧客価値を向上させるには理論的に次の5つの方法が考えられる。
①便益を一定に保ち、コストを引き下げる
②コストを一定に保ち、便益を引き上げる
③コストを大きくするが、便益はもっと大きくする
④便益を大きくし、しかもコストを小さくする
⑤便益は下げるが、コストはそれ以上に引き下げる
(ちなみに⑤は日本バリューエンジニア協会によるVEの正式な定義には当てはまらない。VEは「全体として価値を下げる」という考え方を取らないからである)
1990年代以降のデフレ環境下においては、多くの企業が便益の向上よりもコストの引き下げに注力してきた。そのマインドがイノベーションを阻み、「失われた30年」につながったとする見方が一般的である。ようやく最近になってデフレマインドが収束し、価格が上がっても価値のあるものが欲しい、という空気感が醸成されてきたのは喜ばしい。
もっとも前回述べたように、便益にしろコストにしろ、その捉え方は顧客によってさまざまであり、必ずしも測定可能な機能や金額に比例するとは限らない。例えば日本の整髪料は東南アジアで人気があるが、日本のサイズだと現地の平均的な所得に対してとても高額になり、一般庶民には手が届かないものになってしまう。そこで日本のメーカーは「一回使い切り」のサイズにして一個数円とか十数円で売るのだそうだ。この例など一見、髪を整えるという便益は変わらず、小分けにするコストだけが上がる、というふうに見えなくもない。しかし東南アジアの消費者にとってはまず、「自分達にも買える」という便益のほうが重要なのである。

