2026-5-8 マネジリアル・エコノミクス
企業の経営や経営者の意思決定を近代経済学の理論を用いて解明しようとする学問分野。1951年、アメリカの経営学者ジョエル・ディーンが提唱した。
例えば、製造メーカーが最大利潤を追求する手法は、ミクロ経済学の「生産関数による利潤最大化」である程度説明が可能である。また、経営者が意思決定をする際には、全ての代替案のうち最適なものを選択しようとするのが常であるが、こうした行動は「最適化基準」という理論にあてはめて考えることができる。ディーンはこのように、既にある経済理論とマネジメントの実例を結び付け、企業行動のメカニズムをより明確に解き明かそうとした。
ディーンの功績は、企業の「利潤の正当性」について一定の結論を示したことである。企業は利潤を追求するものではあるが、利潤そのものが目的であるとする考え方(利潤動機)はしばしば社会的な批判の対象になる。また、マクロ経済学的に言えば、完全競争が成立している世界では企業の利潤はゼロになるのであって、現実世界で企業が利潤を得ているのは何らかの「市場の失敗」の結果である。企業行動を経済理論で説明しようとすれば、まず、企業が利潤を得ることのできる「根拠」と「正当性」について納得できる説明がなされなければならない。
ディーンは利潤に関するそれまでの学説を3つの体系に整理した。ざっくり説明するとこういうことである。
1.リスクや不確実性に対する報酬・・・他社に先んじてリスクを取りに行く企業は最も大きな収穫を得ることができる、というもの。
2.時代の過渡期、あるいは市場の不完全さから生まれる利潤・・・今の市場は完全市場に移行するまでの過渡期だから、まだ情報の非対称性が残っている。企業の利潤はそこから生まれている、とするもの。
3.イノベーションに対する報酬・・・利潤は社会が内包する課題をこれまでにない(不連続な)方法で解決する企業に対する報酬である、とする考え方。
ディーン自身は上記のうち3.の「イノベーションに対する報酬」を最も正当性の高い根拠としている。確かに1.には「早い者勝ち」の、2.には「市場の盲点を突く」というイメージがあり、ある種の後ろ暗さがつきまとう。
「社会課題の解決」というと、例えば寄付活動やボランティアのように、営利活動から切り離された活動をイメージする人がまだ多い。実はそれこそが利益の源泉であり、大いばりで利益を獲得することのできる唯一の方法だ、という考え方もあることは、知っておいてよい。しかもこの話、もう75年も前に語られているのである。

