2026-5-10 創造的破壊

Creative Disruption。同じくシュンペーターの言葉である。経済発展において、新しい技術やビジネスモデルが古いものを置き換えるプロセスを指す。シュンペーターによれば、ある社会資源の結合様式が、そこからは連続的にたどり着くことのできない「新結合」に変化する際、古い結合様式は破壊される。そのとき短期的には混乱が生じることもあるが、長期的には新たな産業や市場が形成され、経済全体が成長するというのである。

面白いのは、資本主義経済の本質を言い当てたともいえるシュンペーターが、その資本主義の結末を「うまくいきすぎて自壊する」と述べていることである。彼でさえ最終的な社会主義の到来を予言しているあたり、一世紀前の空気感に触れることができる。

シュンペーターを学ぶとき、筆者がいつも想起するのは「生物学との類似性」である。経済と生物はいくつかの視点から類似点を指摘することができる。

・新陳代謝・・・生物の体では毎日膨大な数の細胞が死に、新しい細胞に置き換わる。それは破壊といえば破壊だが、古い細胞が居座ったままでは組織は機能不全に陥り、個体は死に向かう。

・エコシステム・・・生物の生態系において、ある個体の死は新たな個体の苗床や栄養源となる。

・進化・・・外部環境の変化に適応し、変化した種だけが生き残る。それはとりもなおさず、変化できなかった種を淘汰、すなわち破壊することに他ならない。

この文脈で言えば、リスクを取って古い細胞を壊し、「新結合」による細胞を生み出す触媒が「企業家(アントレプレナー)」である。企業家はイノベーションの成功によって短期間に大きな富を得、それを見た多くの模倣者が新しい細胞を増やして産業が形成されて行くことになる。

創造的破壊の事例は、むしろ現代においてのほうが適切な例を見つけやすい 。例えばスマートフォンは携帯電話やデジタルカメラ、携帯音楽プレーヤー、カーナビといった多くの既存市場を破壊した。AIによる事務作業やプログラミングの破壊はただいま進行中である。