2026-5-16 ベニスのリーダーシップ論②

ウォーレン・ベニスのもう一つの功績は、それまで生まれつきの資質であると考えられていたリーダーシップを「後天的に作られるもの」とした点である。これは企業家についてシュンペーター以前の説をコールが修正した流れに近い。ベニスによれば、リーダーシップ開発はスキルの習得ではなく、「本当の自分自身になっていくプロセス(Being yourself)」である。彼自身の言葉を借りれば「リーダーになるプロセスは、健康な人間になるプロセスに近い」ということになる。

彼はまず、自分を深く知ることが自己開発の第一歩であるとする。自分自身が何者であるかの内省を繰り返し、他者からのフィードバックによって自分からは見えない死角にも気づこうとする意識が必要である。次に、リーダーになるためには避けられない「修羅場(彼自身の言葉だと『るつぼ』)」の経験を踏み、それを肯定的な意味に解釈して消化すること。更にはあらゆるものに興味を持ち続け、時には古い考え方を捨てる勇気を持つことも要件として数えられる。そして、こうしたプロセスの積み重ねにより、最終的には仕事でもプライベートでも変わらない「本当の自分」に人格が統合されたとき、人を率いるに足るリーダーが完成する、のというのがざっくりしたベニスの自己開発プロセスである。

ここから浮かび上がるのは真摯さや謙虚さといった「人としての器」、最近の言葉だと「ソフトスキル」である。結局のところ、人は意識を高く持ち、たゆまぬ自己研鑽を重ねてこそ、リーダーとしての器を身につけることができる、ということであろう。

企業支援を業とする筆者がリーダーシップを語るのはおこがましいのかもしれない。経営上の決断や、結果としての業績は、全て経営者のものであり、コンサルタントにとってはしょせん他人事であろう、という声が聞こえてきそうである。しかし、ベニスの描く「ぶれない」リーダーシップは、クライアントのどんなリクエストにも揺るがず対応する支援者像に結びつく。「実行までやり切る」ことを誓う筆者にとっては欠かすことのできない能力であり、毎日がそれを身につけるための修行であると思っている。一日も休まずブログを書くことで知識をアップデートすることも、その一つである。