2026-5-18 機械的組織と有機的組織

トム・バーンズとG.M.ストーカーが1960年代に提唱した組織の2類型である。彼らはイギリスの企業を調査し、「技術革新に成功した企業」と「失敗した企業」の違いを分析した。その結果、企業の組織は「機械的組織」と「有機的組織」に分類することができ、技術革新に成功した企業は後者の性質を備えていることを明らかにした。

機械的組織とは、上意下達の命令系統が明確であり、職務分担や業務上のルールが細かく決められている組織である。一般的には官僚組織や大工場がイメージされる。生産効率や品質の安定性、低コストに強みがあり、例えば製造業であれば「同じものを大量に、正確に作る」ことに長けている。

一方の有機的組織は、権限や役割が流動的であり、地位や役職を問わない横方向の対話が多い。問題解決には上からの命令より、現場判断で柔軟に動くことが重視される組織である。外部環境の変化が激しく、課題を最初から定義することすら難しい状況で強みを発揮すると言われている。こうした環境下では上が考えて下が実行するスタイルでは間に合わず、各部署の専門家が自主的に、リアルタイムで相互作用する必要があるからである。

誤解されがちであるが、バーンズとストーカーは「有機的組織が常に優れている」とは言っていない。むしろ、「環境に応じて組織を変えろ」と主張しており、これが本質である。例えば鉄道や原子力発電所で作業標準が決まっておらず、毎回自由に動かれたら大変である。こうした事業には統制や標準化、すなわち「機械的組織」が適している。一方で新規事業や新商品開発、DXやAI活用といった不連続な変化、最初から答えのない活動を行う場合は、機械的に管理しようとすると現場が委縮して動かなくなる。「管理で回す仕事」と「対話で回す仕事」の使い分け、という彼らの主張は、これまた現代の「両利きの経営」論につながるものと理解できる。

ドラッカーは彼らの説を受け、「組織(構造)に唯一絶対はなく、単なる道具に過ぎない。道具に良いも悪いもない」と述べた。彼は自分なりに分類したいくつかの組織の長所短所を理解した上で「使い分ける」、あるいは「平行的に使う」ことを主張している。

もう一つ、バーンズとストーカーもイノベーションは一部の天才のひらめきではなく、組織が生み出す(あるいは意図的に生み出すことのできる)現象だと考えていたことは押さえておきたい。現状に行き詰まりを感じている経営者は一人で悩む必要はない。自由闊達な会話が飛び交う組織からはイノベーションが生まれる。経営者はまず、そのための土壌づくりに何をすべきか、という点を考えてみてほしい。