2026-5-20 情報処理システムとしての組織
ガルブレイスの話を続ける。彼の本当の凄みは、組織を「情報処理システム」と定義したことにある。組織は内外のさまざまな情報を収集し、分析し、解釈し、その時々に最適な意思決定を行うための機関であるというのである。ガルブレイスに触れるまでそんな考え方はしたことがなかったが、なるほど言われてみればそういう解釈も成り立ちそうである。
バーンズ&ストーカーと同じくガルブレイスも、組織の置かれている環境が安定している場合には、ルールとルーティンで統制された「機械的システム」が有効であるとした。いわば情報処理にかかる手間とコストを極限まで削ぎ落した効率重視の組織である。ところが、いつの時代もそうだが、そんな安定した状況は長く続かない。外部環境は常に変化するし、社内も変わる。そうなると、これまでの処理のやり方では追いつかないほど情報量が増え、組織そのものの存続が危うくなる。その時に必要なのが有機的システムであり、それを組み立てるための組織デザインである、というのがガルブレイスのざっくりした主張である。
新しい情報や複雑な情報が増えてきたときの対処法としてスターモデルは有名だが、ガルブレイスが提唱したのはそれだけではない。彼は情報処理能力を高める方法として、以下の5つについて述べている。
(情報処理の必要性を減らす方法として)
1.スラック資源を持つ・・・例えば常にギリギリの納期設定をしている組織は非常に多くの情報のやり取りが必要だが、納期に余裕を持たせたり、在庫を多めに持ったりすれば処理すべき情報量が減る。
2.自己完結型タスクとする・・・各部門が互いに干渉せず、独立して動けるように権限を持たせれば部門間の調整が減る。
(情報処理能力を高める方法として)
3.情報システムへの投資・・・ITやデジタルデータの活用である。
4.横断的関係の構築・・・タテ方向の情報伝達だけに頼らず、プロジェクトチームやマトリクス組織など、階層を通さない情報ルートを増やす。
5.組織そのものの最適化・・・先ほどのスターモデルのように、戦略に合わせて組織をリデザインすることである。
お分かりの通り、ガルブレイスの論も極めて実践的である。経営者の方々は、押し寄せる情報量に組織が追いついていないと感じるときには、上記5つの切り口で現状を眺めてみられると良いと思う。
バーンズ&ストーカーからガルブレイスに続く「組織のコンティンジェンシー理論」、すなわち異なる2タイプの使い分けという考え方はドラッカーに引き継がれ、更にはオライリーとタッシュマンの「両利きの経営」につながっている。実務上最も気をつけなければならないことは、この2タイプの組織のうち、強いのはいつも「機械的システム」のほうだ、ということである。当たり前のことだが、立ち上がったばかりの新規事業より既存事業のほうが稼ぐし、発言力も強い。社内の全ての仕組みがそこに向けてできあがっている。新たな情報に試行錯誤する「有機的システム」は軽んじられ、あるいは組織のノイズとして排除される。ドラッカーは「既存事業のマネジメントがイノベーションを殺す」と述べ、2つの異なる組織を「同じ組織の中で、異なる原理で動かすべき」と述べた。けだし名言である。

