2026-5-21 ペンローズの企業成長論①

エディス・ペンローズは現代経営学の2大潮流の一つであるリソース・ベースト・ビュー(RBV:市場構造でなく内部資源に着目する学派)の礎を築いた人である。彼女は第二次大戦後に増加した「多角化を通じて成長する企業」を調査し、企業が成長するメカニズムの解明に取り組んだ。

当時の新古典派経済学では、企業は「市場の価格動向に従って生産量を決めるだけの存在」とされ、単なる生産関数として扱われていたため、その内部構造は一種のブラックボックスとされていた。ペンローズ自身も経済学者だが、そうした現状に不満を感じ、そのブラックボックスを解き明かそうとしたのである。

ペンローズは研究の結果、企業を「一つの管理組織体の中に集められた経営資源の集合体」と定義した。材料を中に入れれば自動的に製品が出てくるハコではなく、「人・モノ・カネの詰まったプール」と捉えたのである。その上で、経営資源そのものと、それを使って生み出される成果物(サービス)を明確に区別し、同じような資源を保有していても、経営者や組織の知識・経験によってサービスの質が変わり、それが企業の特長、あるいは競争優位の源泉となる、と結論づけた。

言い換えれば彼女は、経営資源を「何か一つのものを作るためだけに必要なもの」とするのではなく、使い方や組み合わせ方によってさまざまな成果を生み出せる「可能性の束」と認識したということである。

しかしながら、いくら可能性の束があっても、それらをうまく料理するノウハウ、あるいは人的・時間的余裕がなければどうにもならない。ペンローズはこの点についても言及している。彼女によれば、企業は日々の業務に習熟してくると、経験に基づく知識や、ルーティン化による時間的余裕が生じてくるようになる。これらは企業にとって未利用の余剰資源であり、使わないのはもったいないという意識が働く。これが製品多角化や新市場進出といった行動の動機であり、原資であるというのである。

知識の蓄積や余裕の創出には時間がかかるから、経営資源をたくさん調達すればすぐに成長できるというわけではない。一定の熟成期間が必要である、というわけで、このような成長曲線の一時的な停滞は「ペンローズ効果」と呼ばれ、今でも時々引用されている。

「資源」という言葉には無機質な響きがあるが、ペンローズの理論には、人の持つ創造性や習熟に対する、人間中心の暖かい視点がある。何と言っても、手持ちの武器は限られていてもそれらは「可能性の束」であり、使い方によって無限大の成果が得られる、というのは、中小企業の経営者にとって大いに励まされる物言いではないだろうか。