2026-5-24 ワイクのセンスメーキング理論②
「センスメーキング」という言葉自体はカール・ワイクのオリジナルではなく、もともとコミュニケーション学や社会科学、認知心理学などの影響を受けている。彼の功績は先人たちの知恵を借りながら、それを「組織のサバイバル論」として展開させた点にある。
ワイクのオリジナリティはおおむね以下の3点に集約される。
・個人から組織への拡張・・・それまでのコミュニケーション学や心理学では個人の頭の中の認知、という学問領域であったセンスメーキングを「組織が混沌とした環境を生き抜くための相互作用」として描き直した点。
・「正しさ」より「納得」の重視・・・従来の経営学は「いかに正確なデータを集めるか」という部分を論点にしていたところ、「不確実な状況下では100%正しい情報など存在しない」ことを前提に、より大切なことはメンバーが「よし、これでいこう」と納得して前を向けるストーリーを作ることだ、とした点。これはサイモンらの「限定された合理性」を踏まえた実にリアルな解釈であり、当時の実務家に衝撃を与えた。
・進化論モデルとの融合・・・前回述べた通り、組織を動的な有機体と捉え、環境に適応する存在であるとともに、行動によって環境に影響を与えることもある、とした点。
リーダー像に関して言えば、ワイクのそれは「正解を示す人」ではない。答えでなく問いでメンバーに視点を提供し、合意形成を導く人である。「誰にも正解は分からない」と正直に言い、それでも「この状況をどう見るか」「我々が大切にしている価値観に照らしてどうか」と問い続けてくれる人である。そこから導出された「センス」はメンバー全員の腹に落ち、それが客観的に見て正しいかどうかに関わらず、組織を動かし、状況すら変えるのである。
これは現代の「サーバント・リーダーシップ」や「心理的安全性」につながる非常に強力な示唆であり、多くの経営者や管理職が目指すべきリーダーの姿であろうと思う。
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