2026-5-31 制度派組織論
組織は環境に適応して合理的に進化する、というそれまでの通説に対するアンチテーゼとして主張された論である。パウエルとディマジオは1980年代のアメリカ企業を研究し、業種やビジネスモデルが違っても外形的にはそっくりの制度を採用している組織が多いことに気がついた。それらは例えば、当時の長期経営計画、戦略企画部門、多層的階層制度、予算管理システムなどである。組織進化論に従うならそれぞれ全く違う仕組みを持っていてもよさそうなものだが、そうならないのには理由があるはずだ、というのが二人の問題意識であった。
彼らの結論は、平たく言えば「世間体」である。企業が社会で活動するためには、世間から最低限「ちゃんとしている」と思われることが必須の要件になる。そのために企業は、社会的な意識の変化や流行に合わせて同じような形になっていくのだ、というのである。彼らはこれを「同型化」と呼び、3種類に分類した。
・強制的同型化・・・政治や法律、親会社などからの圧力によって強制されるタイプ。最近だと「コンプライアンス対策室」や「環境対策部」であろう。
・模倣的同型化・・・何が正解かはわからないがとりあえず成功している企業をまねておこうというタイプ。「DX推進室」とか「フリーアドレスのオフィス」。
・規範的同型化・・・専門教育を受けた人や資格保有者の集団に見られる独自のタイプ。病院のカンファレンスやコンサル会社の評価体系は驚くほど似通っている。我々はプロなんだからこうするのが正しい、という意識がそうさせるのだろう。
世間体であるから「合理性」とは別の規範である。個人に置き換えて、儀礼的なマナーや社交辞令をイメージするとわかりやすい。葬式に黒い服を着て行くことに合理性 はないが、アロハシャツを着て行ったら後で何を言われるかわからない。だから葬式の参列者は(みんな本当の中身は違うが)同じ黒い服を着ているのだ。組織制度論はおおむねそういうことを言っている。
ある程度の規模の会社なると、名ばかりで明らかに機能していない部署や、身の丈に合っていないプロジェクトをよく目にする。なんでこんなことをやっているのか、と思うが、制度派組織論にあてはめればかなりの部分は「世間体」で説明できる。合理性とは別の規範、とは言うものの、「社会との摩擦を避ける」という意味での合理性が、そこにはある。

