2026-6-2 制度派組織論と事業機会
ドラッカーの言を待つまでもなく、企業は社会の被創造物であり、社会がその存在を許さなければ一夜にして消滅させられる存在である。かたや、サイモンの言う通り、経営者の興味関心は有限の経営資源であり、あれもこれも全力投球というわけにはいかない。企業は最低限の「世間体」を整えようとするものだ、とする制度派組織論は、この矛盾に折り合いをつけるための知恵について述べたものと言える。
SDGsへの対応にしても、筆者の知る多くの企業(そこそこ名の知られた大企業も含まれる)は、本音のところでは一過性のブームだと認識している。これまでにもさまざまあった不可避の社会的要請の一つとして、最低限のコストで、最大限の「やってます感」を表現することに腐心している。
しかし、である。一方でこうした社会的要請を逆手にとって事業機会に変えた企業の事例も決して少なくない。例えばアウトドア用品のパタゴニア。環境規制やサステナビリティ要求が強まる中、業界の多くの企業は「批判されない程度にやる」というスタンスで臨んだ。そんな中、パタゴニアだけは持続的な原料調達やリユース、リサイクル、あるいはリペアサービスなどを積極的に打ち出し、今や「環境意識の高い企業」としてのブランドを販売している、と言える企業になった。そうした背景を知らなければ不当に高いとも思える価格設定さえ、多くの顧客は喜んで受け入れている。制度対応への圧力をブランド資産に転換した好例と言えよう。
トヨタは1990年代に強化された環境規制への対応に当たり、どうせなら自社の技術を磨いて競争優位を築こうと考え、世界初のハイブリッド車「プリウス」を上梓した。そして筆者の支援先には、独自のリサイクルシステムにより資源循環を次世代の主力ビジネスにしようと取り組んでいる企業が存在する。
一見するとネガティブにしか見えない変化にも、思わぬ商売のネタが潜んでいることがある。また手間が増える、コストがかかる、と嘆く前に、経営者の皆様には一度、「これをビジネスチャンスにする方法はないか」と考えてみることをお勧めする。
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