2026-6-11 処方箋としてのMIJIGRAM(ムジグラム)
無印良品の「MUJIGRAM」は、フェルドマンとペントランドの理論をビジネスで体現したわかりやすい事例と言える。全社員が従うべき2,000ページを超える超詳細なマニュアル(ルーティン)であるが、彼らはこれをガチガチの規則として取り扱ってはいない。
「表出的な側面」・・・無印良品では、店舗のディスプレイからレジ打ち、掃除の仕方に至るまで、すべての業務が「標準化」され、マニュアルに落とし込まれている。まずこのマニュアルに従って業務を行うことに、新人やベテラン、役職の別はない。
「実行的な側面」・・・しかし、マニュアル通りにやってみると、例えば「この並べ方ではお客様が手に取りにくそうだ」とか「この掃除の順番はこちらが先のほうが効率がいい」といった、現場での違和感や工夫の余地が必ず生まれる。
ここからが無印良品のすごいところで、現場で見つかった「もっと良いやり方」は店長を通じて本部に集約され、毎月マニュアル(MUJIGRAM)自体が更新されるというのである。このサイクルはまさに、フェルドマンたちが提唱した「ルーティンは実践によって内発的に進化する」という動的なメカニズムそのものである。全店舗からの提案を集約し、吟味し、マニュアルを修正する作業の膨大さは想像に難くないが、「それだけの価値がある」と考えての仕組みであろう。これもまたルーティンである。
たいていの組織では、ルーティンはもともと作られた時の意味や現時点における有効性を考えられることなく、いつの間にかメンバーを縛るルールになってしまう。フェルドマンらが言うように、現場知のフィードバックを受けて自律的に変化するという面はあるにしても、放っておけば暴走するものであることもまた事実であろう。その意味で、最初から毎月書き換えることを前提にした無印良品のルーティンには、仕組みとしての凄みがある。無印良品の社員にとってルーティンは最終的なルールではなく、「現時点におけるベストプラクティス集」であり、「さらに良い方法を見つけるためのたたき台」なのであろう。
<関連記事>

