2026-6-12 成功する起業家とは

MUJIGRAMは「進化するルーティン」、すなわち、実践により生じた結果を事後的に取り込み、自ら修正と強化を繰り返すシステムだと考えることができる。これを少し拡大して考えてみると、かつて天才とか特別な才能として捉えられてきた「起業家」の行動も違う様相を帯びてくる。起業家は、天から降ってきたひらめきにより特別な計画を遂行する「選ばれた存在」ではない。むしろ、まず自分にできることを実践してみる。実践の結果として生じるさまざまな事象に意味づけを行い、都度つど修正を行いながら、次第にビジネスの形を整えていく。そうした企業家像が浮かび上がる。

この仮説を実証してみせたのがサラス・サラスバシーの「エフェクチュエーション」である。彼女は繰り返しビジネスを成功させる数十人の起業家の思考パターンを分析し、「実践が先、解釈はあと」という特徴を導き出した。この論は、それまで唯一の成功パターンと考えられてきた「コーゼーション」―あらかじめ決められた目標に対し最も成功確率の高い推論を積み重ねて行動プランを導く手法―への強力なアンチテーゼとなった。

一般的なビジネス書においてエフェクチュエーションは「成功した起業家の行動スキル」としてやや軽く扱われているが、アカデミックな領域では「実践的転回」と深くリンクする形でその理論的価値が議論されている。例えば、知識は人の頭の中だけにあるのではなく、具体的な身体活動の中で立ち現れるという「身体知」や「暗黙知」の概念。他者や仕組み、あるいはモノといった別の「アクター」とのつながりにおいて、その都度動的に構築される「環境」の認識。実践した結果を解釈して意味づけする「センスメイキング」・・・。こうした経営学における実践的転回の要素が揃ってきたので「エフェクチュエーション」が誕生できた、という解釈が可能である。

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