2026-6-23 反射的実践者①
リフレクティブ・プラクティショナー(Reflective Practitioner)。実践的転回の代表的な思想家であるドナルド・ショーンが提唱した「プロフェッショナルのあるべき姿」である。ショーンは、それまで主流だった専門家の概念、すなわち「大学で学ぶような理論・フレームワークを現場にあてはめ問題を解くのが専門家だ」という考え方を正面から否定した。彼は優れた業績を残している多くの専門家を分析し、彼らが理論を機械的に当てはめているのではなく、現場に対応しながら反射的・即興的に解決策を生み出していることを証明してみせたのである。
ショーンによれば、反射(リフレクション)には2種類ある。一つは専門家がまさに現場に向き合い、何かを行っているときにリアルタイムで行うものである。例えば優れたセミナー講師が、用意したスライドへの受講者の反応が悪いのを察知して、即興で問いかけを変えたり、ワークを差し込んだりする、といったことである。もう一つは、ある事象がすべて終わった後の反射である。こちらは「内省」とか「振り返り」という表現のほうがぴったりくるかもしれない。同じセミナーの例で言えば、「あの時、場に漂っていた空気は何だったのか」を深く反芻し、自分の持っている理論をアップデートするという感じになる。
中小企業診断士という資格を取得するにはそれなりの知識が必要であり、我々の仲間は皆、数多くの専門用語やフレームワークを身につけている。どんな場面にどの型を当てはめるのが適切か、という判断もおおむねつく。逆に言えば、診断士の資格は「そこまでのことはできますよ」という証明書だと言える。
しかし、いったんコンサルティングの現場に出れば、教科書通りにいかないことばかりである。理屈で割り切ることのできないさまざまな要素が複雑に絡み合い、それらが時間とともに変化したりする。そもそも課題が何か、ということさえはっきりしないことが多い。資格はこのとき、我々に何の後ろ盾も与えてくれない。
ショーンが「泥沼の現場」と表現したこの状況に向き合うとき、「さあ、課題を示してください。私が適切な解決策を示してあげます」と言う専門家がもしいるとしたら、確かに何の役にも立たないだろう。知識や技術がどんなに優れていても、クライアントとの泥臭い対話や現場の空気に瞬時に反応することができないのであれば、それは本当のプロフェッショナルとは呼べないのだという、ショーンの言葉はとても重い。

