2026-6-28 イノベーションの構成要素モデル②
アマビールの理論で面白いのは、個人(あるいは小集団)レベルの創造性と、組織レベルとしてのイノベーションを切り分けて示したところである。もちろんこの2層は互いに関連しており、ざっくり言うと「イノベーションは組織の成果だが、その源泉は個人の創造性である。そして、その個人の創造性は、組織環境によって大きく左右される」という感じになる。
・第1層:個人レベル(創造性)・・・前回説明した内部的3要素(専門知識、創造的思考力、内発的動機づけ)である。この3つが揃うことで、一人ひとりの創造性が発揮される。例えば繊維の会社なら「この糸ならスポーツ用途にも応用できるかもしれない」という発想が生まれるのは個人である。しかし、この段階ではまだアイデアが生まれただけである。
・第2層:組織レベル(イノベーション)・・・イノベーションは個人だけでは完成しない。先ほどの例なら「その糸を使って試作品を作る」「営業が顧客に持っていく」「製造が量産できるか検証する」「技術部門が品質保証できるか確認する」「経営層が投資判断する」といった、それぞれお金も人手もかかる作業が発生し、しかる後に初めて事業になる。つまり、個人から生まれた創造性が、組織の力によってイノベーションに成長する流れである。
アマビールは更に、組織環境(外部の1要素)は単なる背景ではなく、個人の内部的3要素に直接影響を与えると考えた。例えば新しい挑戦を歓迎し、失敗を責めない環境であれば、個人のモチベーションは上がるし、発想も自由になる。逆に前例主義で結果しか評価しない環境の中では、専門知識だけは残っても、アイデアややる気は出てこない。
ここにアマビールのメッセージがある。通常は「創造的な人を採用すればイノベーションが起きる」と考えがちである。しかし彼女は「創造性は個人の才能だけでは決まらない」と言っている。優秀な人でも上司や評価制度、あるいは目に見えない組織風土によって創造性の発現度合いは大きく変わる。だから組織設計が重要なのだと。
最近の支援事例だが、「うちは長らく新商品を出せていない。だから優秀なデザイナーを採用するんだ。この人がやってくれるだろう」とおっしゃる社長がおられた。「長らく新商品を出せていない」組織の仕組みを変えることができなければ、おそらくそのデザイナーが活躍できる場面は少ないだろう。
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