2026-7-1 「組織のイノベーション」と「人の創造性」
イノベーション研究の歴史から見ると、アマビールの最大の功績は「イノベーションを『人の創造性』から説明したこと」にある。少し振り返ってみよう。
出発点はもちろんシュンペーターである。彼はイノベーションを「新結合」と定義し、「起業家精神」や「創造的破壊」を唱えた。イノベーションという抽象的な概念の解像度を飛躍的に上げた功績ははかり知れないが、しかし彼は「人はどうやって新結合を思いつくのか」というところまでは説明していない。この時点でイノベーションはまだ経済学の「現象」だった。
70年代以降になると、ここに組織論の研究者が登場する。バーンズとストーカーは「有機的組織のほうがイノベーションに向く」と示した。ここでは「組織構造」がテーマになっている。更にジェームズ・マーチが「知の探索と深化」を提示し、今度は構造でなく組織学習へ発展する。しかしここに至っても、「創造性そのもの」についてはブラックボックスのままだった。
ここでアマビールが登場する。彼女は「創造性そのものを科学的に説明する」ことに焦点を当てた。つまり、組織が生み出すイノベーションの源泉は個人の創造性にあり、したがってイノベーションのメカニズムを解明するには心理学の視点が不可欠である、という論理を組み立てたのである。
既述の通り、彼女は創造性を「専門知識」×「創造的思考」×「内発的動機」に分解して説明した。更に組織環境がその創造性を左右することを整理した。ここで初めて、心理学と組織論が一本につながるのである。
アマビール以降、多くの研究者がイノベーションを生み出すための組織プロセス、すなわち「個人の創造性から生み出されたアイデアを組織としてどう育てるか」というテーマに取り組むようになる。「デザイン思考」「オープンイノベーション」「アジャイル」「リーンスタートアップ」など、イノベーションに関する現代の主流の考え方は、アマビールの研究成果に負うところが大きい。
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