2026-7-9 人が創造的行動を選ぶ理由
キャメロン・M・フォードは経営学者であるが、心理学や社会学にも通じており、組織論のイノベーション研究を心理学の創造性研究と一本につなごうと試みた人である。彼の問題意識は、「人は常に創造的な行動を選ぶわけではない」というところからスタートしている。それならばある個人の中で「創造的な行動」と「ルーティン的な行動」はどのように選択されているのか、もっと言うと「能力のある人が、なぜ創造的な行動を選ばないのか」というのがフォードのテーマである。
彼はおおむね3つの要因を挙げている。
・モチベーション・・・やってみたいと思えるか、である。「面白そう」や「意味がある」といった内発的なものもあれば、「やれば評価される」「昇給する」といった外発的なものもある。
・センスメイキング・・・他者との対話から導かれる「腹落ち感」である。例えばその新しいやり方が「組織への貢献度が大きい」、あるいは「自分にしかできない」といった納得感が人を創造的行動に移させる。
・知識・スキル・・・思いついても、知識やスキルがないと実行できない。
更に、ここはアマビールやウェストとつながるのだが、グループや組織、市場といったさまざまな「外部環境」が本人の選択に影響を及ぼす、とした点が単なる心理学ではないところである。例えば、「上司が認める」「仲間が協力する」「チャレンジが認められる制度がある」「入手可能な資源がある」といった環境なら、その人が創造的行動を選択する可能性は高くなる。
フォードの理論は、創造性研究というよりは「行動選択の理論」である。創造性そのものについては何も説明していない。しかし、この理論がないと、例えば「心理的安全性を高めました」「チャレンジ制度を作りました」「試作費を予算化しました」と言っても誰も動かない、という現実を説明できない。水場に連れて行っても水を飲まない馬の例え通りである。何が馬に水を飲もうと思わせるのか、について説明したフォードの理論は、動かない組織のどこに注目すればいいかを考えるものさしになる。

