2026-7-10 イノベーションとは何だろう

ここまで来て「そもそも」のタイトルであるが、一度はきちんと整理しておきたい。

コンサルタントとして企業を訪問すると、「イノベーションを起こしたい」という相談を受けることがある。実際、現在顧問契約をいただいている製造メーカーでも(明示的にそういう契約になっているわけではないが)実質的に与えられているお題は「内外環境の変化からイノベーションの種を見つけよ」である。

しかし、そもそもイノベーションとは何であろうか。それをおっしゃる企業様の意味するところはさまざまである。「新商品開発」「新市場開拓」「社員の姿勢」「組織の雰囲気」・・・。どれも間違いではない。しかし、どれもそれが全てではない。

実はこの問いには、半世紀以上にわたって世界中の研究者が取り組んできた。「どんな人が新しい発想を生むのか」「顧客のニーズはどうやって見つけるのか」「技術革新=イノベーションか」「組織はどうすれば挑戦できるのか」・・・

筆者自身も会社員時代は「新しいことをやれ」と何度も言われた。海外営業、新規事業、ショッピングセンター開発、グループ会社経営・・・。振り返れば、変化を求められる仕事ばかりだったと言って良い。だが、今思えば「イノベーションとは何か」を体系的に教わった記憶はない。現場では数多くの失敗とわずかな成功の積み重ねを足掛かりに、手探りで進んでいたように思う。

最近になって、その長年の研究成果を体系化した国際規格が作られた。それが「ISO56000シリーズ」である。この規格は新しい理論を提案しているわけではなく、これまで長きにわたるイノベーション研究の成果を一つのマネジメントシステムとして整理したもの、と考えた方が実態に近い。

ちょっと待ってくれ、品質(9001)や環境(14001)はいざ知らず、イノベーションなど「管理」できるものではあるまい、あれは偶然起こるものではないのか、と思われた読者はこのコラムを少しさかのぼって読み返してほしい。そうではない、というのが最近の定説である。ただ、56000の目指すところは「管理」ではなく「環境づくり」である。

これからしばらくの間、このISO56000を軸に話をしてみたい。規格自体の説明というより、その背景にある研究者たちの「問い」を一つずつたどってみようと思う。そうして、最後には「なぜISO56000はこの形になったのか」が、自然と見えてくると良いと考えている。

次回はまず、「イノベーションはどこから生まれるか」という問いから始める。