2026-7-12 身近にあるイノベーションのヒント
また夏が来た。もともと得意な季節ではないが、近年の猛暑は人が耐えられる限度を超えているように思う。40年前はまあ、がんばればグラウンドで野球の試合はできた。今は日陰のない日中にプレーするのは自殺行為である。もちろん自分が初老の域に入ったということはあるけれども。
この猛暑、それで潤う業界もあるにはあるが、基本的には景気には逆風である。なにせ家から出て活動してこその経済である。「不要不急の外出は避け、適切にエアコンを」などと言われるとお金は回らない。
ところが最近の猛暑を儲けのネタにしている事例がいくつかある。例えばファン付きジャケット。ベストやブルゾン型の上着にモーターとファンが内蔵されており、服の中を風が通るアレである。作業服市場を中心に着実に成長し、2023年時点で1,200万着に迫る市場規模なのだそうだ。
ドラッカー流に言えば、これが「ニーズ」である。事務職ならいざしらず、土木や建築の現場で働く人たちは日中の暑さから逃げられない。清掃や警備など社会インフラを担うエッセンシャルワーカーも同様である。ここを何とかしなければ夏の間じゅう仕事を止めなければならなくなる。福利厚生とか働きやすさというレベルを超えて、事態は既に事業の継続、もっと言えば社会生活の維持に直接かかわるマターになっているのである。
であれば、企業や公共機関は金を出す。もはや「金で済むなら」のレベルである。多少値段は高くても高機能で快適に過ごせる製品が受け入れられる。技術進歩が進み、更に市場が拡大する。
猛暑と言えば「日傘」の話もある。ここ1、2年日傘をさしている男性が急速に増えた。男性用の日傘で儲けた会社も多いであろう。こちらは「認識ギャップ」と言われるものである。何かが物理的に変わったわけではない。単に人々の「ものの見方」が変わったのである。
少し前まではよほどの事情がない限り、男性にとって日傘は無用の長物であった。世間の目がそれを許容しなかったからである。今は筆者のまわりにも「命にかかわる」と言って日傘を持ち歩く男性が増えた。筆者自身も携帯している。どうせ折り畳みの雨傘は常備しているから、晴雨兼用なら負担も増えない。
経済新聞のトップインタビューで「猛暑のせいで売上が減った」「秋以降の冷え込みに期待する」といったコメントを目にすることがある。一方で猛暑をビジネスチャンスと捉え、果敢にチャレンジする会社がある。どちらの会社がイノベーションを生むか、誰の目にも明らかであろう。
もちろん変化が一時的であることも多いから、うかつに飛びついたら裏目に出たということだってありうる。しかしドラッカーは、ばくちを打つ必要はないと言う。ゆっくりと見極め、これは確実だと確信が持てるようになってから取り組んでも間に合うのだと。彼の言葉を借りると「確定した未来」に乗るのである。
ちなみにこの猛暑について言えば、一時的ではなく不可逆的な現象であり、少しでも気温上昇の進行を遅らせるのが精いっぱいである。これは専門家のコンセンサスであり、トランプ大統領が何を言おうとも覆ることはない。何とか持ちこたえてやり過ごす、という選択肢はないのである。
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