2026-7-13 なぜイノベーションは難しいのか ~第一の壁~
「新しいことをやりましょう」・・・この言葉ほど現場で実現しないものはない。会社員時代も、コンサルタントになってからも、「変わらなければ」という人はそれこそごまんといたが、実際には誰も動かない、というケースがほとんどだった。なぜだろうか?筆者の考えでは、そこには3つの壁があるように思う。一つずつ説明しよう。
・第一の壁・・・「忙しい」
シンプルに忙しいのである。例えば今日の受注、今日の出荷、クレーム、会議、商談・・・これだけで一日が終わる。何かを探索する時間など残らないし、そもそも周りは「考えている時間」を仕事とは見てくれない。いくら上が叫んだところで、「そんな時間あるかよ」というのが本音である。
だからドラッカーは、「機会を探せ」とは言わなかった。「機会を探すことを経営の仕事にしろ」と言ったのである。イノベーションの探索は業務の隙間に行うものではなく、経営のど真ん中にある「仕事そのもの」であると。
そう言われても、であろう。よくわかる。日々の業務は大切でありゆるがせにはできない。ルーティンをていねいにこなすことが今の会社を支えているのは事実であるから「そんなものは放っておけ」と言える経営者はいない。たいてい「そこを何とかしてくれ」で終わってしまい、探索やチャレンジといったテーマは「いつかやるべき仕事」の箱に追いやられ、いずれ忘れ去られてしまう。幾度となく目にした光景である。
解決策がそうたくさんあるわけではない。本当に変える気があるならば、まず責任者を決めることである。そして、彼または彼女に「求められる成果」と「達成期限」を伝える。もちろんそれに必要な権限も与える。可能であれば経営者の直属に置いて、その活動に正当性を与える。こうしてイノベーションの探索を「誰かの仕事」にして初めて、変化は具体化する。
担当者を決めるにしても、彼らがやっていた仕事はどうするのか、という声も聞こえてきそうである。新しい仕事を任せたいほどの人だから、それまでもかなり重要な仕事をこなしていたに違いない。このことについて、ドラッカーは「計画的廃棄」という言葉で解決策を示している。
ざっくり言えば、時期を決めて仕事の棚卸をするのである。「ここからの注文は次も受けるか」「この会議はいつまで続けるか」「この報告書はやめられないか」・・・。プロジェクトなど新しく始めた仕事なら、初めから「この時期が来たら継続の可否を検討する」と決めておく。要諦は「やめることを前提にする」ことである。続ける場合は続けなければならない理由を明確に説明する。それができないならスパッとやめる。何か事情があって例外的に続ける場合も、「泣き」は1回までだと言う。2回延長してうまくいったためしはないと。
ドラッカーの言うことが常に正しいかどうかはわからないが、たいていの会社では「やめる場合」のほうに説明を求められる。これを逆にしてみる、というのは一つの考え方であろう。それでなくても放っておけば仕事は増えるばかりである。

