2026-7-15 なぜイノベーションは難しいのか ~第3の壁~

・第3の壁・・・「評価されない」

仮に頑張って挑戦しても、売上が上がらなければ評価されない。失敗すると減点される。成功しても「たまたまだね」で終わり。これでは誰も挑戦しない。従業員にとって「評価」は会社の姿勢を理解するための最も有力なサインである。何をやれば昇格し、何をやれば減給されるか、彼らは常に目を凝らして見ている。会社では評価が行動規範を示す。

こんな光景を見たことがある。あるプロジェクトの立ち上げを提案した中間管理職が役員会で説明を求められた。彼の説明が終わった後、担当役員は「よくわかった。思い切ってやりなさい」と言ったのだが、その後が良くなかった。「で、失敗したら君が責任を取るんだよな」。冗談めかしてはいたが、役員の目は笑っていない・・・。役員会で承認したのだから責任が誰にあるかは明白だと思うが、こういう組織ではまあ、イノベーションは期待しにくい。

例えば、である。既存事業はもう基盤ができあがっているから、そんなにシャカリキにならなくてもそれなりの売上は上がる。それと同じ基準(売上や生産性)で探索活動を評価しようとしていないだろうか。新しいことに挑戦するのは何かと手間がかかる。お金も時間もかかる。やっている人間もなかなか成果が出ずに心が折れそうになる。そんなときに、「既存事業は少ない人数でこの成績を出しているんだ、それに比べて君たちの効率の悪さはどうだ」みたいなことを言ってしまったらどうなるか。もう誰も手を上げてはくれないだろう。

そのうちに、既存事業のほうからも不満の声が上がり出す。いわく「俺たちが稼いだ金を喰いつぶしている」「社長はいつまであいつらを甘やかしておくんだ」・・・。こんなふうな経緯でつぶされてしまった新規事業のタネをいくつも見てきた。

アマビールや、彼女の理論を発展させたウッドマンによれば、創造性は能力だけではなく、「環境」が決める。つまり、変化の芽があってもすぐにつぶれてしまうのは組織が悪い、ということである。

ドラッカーは、イノベーションのための組織は、既存事業の組織から独立させるべきだと主張している。目標や達成基準、予算についても既存事業とは切り離して管理すべきだと。50年前のこの「出島」の発想は、実はISO56000の思想にも息づいている。

イノベーションは能力ではなく、むしろそこにかかる時間や人間の心理、組織の力学や評価制度といった要素との戦いとして、50年以上研究されてきた。では、この難しさを企業はどのように乗り越えてきたのか。次回からはこの点について考えてみたい。

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