2026-7-20 個人の創造性を引き出す組織とは

フォードは個人が創造性を発揮するための条件を以下の3つとした。

①知識・スキル ②センスメイキング ③モチベーション

これに対し、アマビールが唱えた条件は以下の3つである。

①専門知識 ②創造的思考力 ③内発的動機づけ

使っている言葉は少し違うが、それぞれの①と③はほぼ同義だと考えられる。違うのは②である。フォードが周囲の人たちとの対話から生まれる「センスメイキング(腹落ち感、納得感)」を重視したのに対し、アマビールはあくまで個人の資質としての「創造的思考力(やわらか頭)」を条件としており、この意味でアマビールの定義のほうが厳密と言える。二人とも4番目の条件として「その個人を取り巻く外部環境」を挙げており、フォードのセンスメイキングはこの外部環境の要素を含むと考えられるからである。

それでは、個人の創造性を引き出す外部環境とはいかなるものか、どんな組織なら新しいアイデアがのびのび育つのか。アマビールの説に沿って少し整理してみよう。

・イノベーションへのモチベーション・・・いわゆる「組織風土」である。安心して発言や挑戦ができる「心理的安全性」や、対話や共創を重んじる「場」の存在を含む。先述のフォードの「センスメイキング」はここに含まれると考えられる。雰囲気とか文化の話だからなかなか一朝一夕に作り出せるものではないが、あとで述べるイノベーション・マネジメントによって少しずつ望む方向に変えていくことは可能と考えられている。

・タスク領域の資源・・・人や予算、設備といった、イノベーションの具現化に必要な経営資源を使えるようにしてあげることである。従来の仕事を減らしたり完全にやめたりして「時間」を作ってあげることも含む。もちろん限度はあるが、やるべきだと決めたことであればできる限りの資源を割くのがトップの仕事である。

・イノベーション・マネジメントのスキル・・・ISO56000に直接つながる概念である。イノベーションのビジョンを示す「リーダーシップ」、当事者に対する「正当性の付与」、建設的な「評価とフィードバック」、既存の組織から切り離し過度に干渉しない「自律性の付与」等が該当する。また、プロトタイプを実装するための「手順やルール」を定め、運用することも必要にある。

お分かりになるだろうか。もともとクリエイティブな風土を持つ組織であれば経営者は特段やることがない。むしろ間違ったイノベーションの方向性や予算の超過を「管理する」ということが仕事になるかもしれない。しかし、長年筆者が見聞きしてきた多くの会社はこういうタイプではなかった。保守的で、増殖したルーティーンをこなすのに手いっぱいの組織がほとんどである。

そうした組織で新しいことをやろうとすれば、「やれ」と言うだけでは無理である。「必要なものを言え」と言って与えるだけでも足りない。トップ自らが本気度を示し、全面的に応援するが過度に口は出さないという、「積極的かつ抑制的」な態度で臨む必要がある。一方では仕事の流し方や評価の仕組みに目を配って、適切なやりかたに変えてあげなければならない。こうしたことは現場にはできないからである。

そうして経営者自身が細やかな気配り、目配りを絶やさなければ、組織風土は少しずつ変わっていく。逆に言えば風土や文化を変えるのにはこういうやり方しかないと筆者は考えている。

少し前に話した経営者で「新規事業開発部を作った。全部彼らに任せてある」とおっしゃる方がおられた。任せるのは悪いことではないが、現場には手が届かない部分のイノベーション・マネジメントがきちんとなされているか、少し心配になる。

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