2026-7-21 イノベーションを世に送り出す

現実問題として、会社のどこでどんな風にイノベーションが生まれ、世の中に出ていくのか。現時点において標準とされており、ISO56000でも踏襲されている考え方が「ウッドマンの3層モデル」である。

アマビールやフォードが説明したように、イノベーションのタネはまず個人レベルで発生する。このレベルでいくつかの条件が必要であることは前回述べた。ここである程度カタチになったアイデアは、今度は複数人のチームのレベルに送られて検討される。個人からのアウトプットがチームへのインプットになるのである。

チームレベルで創造性が発揮するためにはどうあるべきか、という点についてもいくつかの条件があるが、おおむねアマビールらが指摘したポイントと似通っている。以前に紹介したウェストの学説を参照いただきたい。

やがて、チームのスクリーニングを潜り抜け、更にブラッシュアップされたアイデアは、例えばプロトタイプのようなものに形を変え、今度は事業化を念頭に、より大きな組織のレベルにインプットされる。ここで市場性、成長性や使用可能な経営資源などを十分に検討され、「勝算あり」と判断されたものだけが実際に世の中に出ていく、という流れになる。会社の規模にもよるが、多くの読者にとっておおむね異論のないモデルであろう。

面白いのは「個人」「チーム」「組織」という3つのレベルは独立して存在するのではなく、互いに影響し合い、変化を生み出す、という点である。例えばアイデアを出しやすくするための組織設計や評価システムがチームの心理的安全性に影響を与える、といったことは十分に考えられるし、心理的安全性が高まればメンバーである個人の姿勢が変わるのはむしろ自然である。このことは創造性を高めるための取り組みを具体化するに当たって、重要な示唆を含んでいる。

多くの人は、創造性を高めるためにはまず人材教育を行うべきだと考える。「人が良くなる→組織が良くなる」の順番である。ところがウッドマンはその逆もあると言う。「組織が変わる→人が育つ」である。何となく現場感覚とも一致しないだろうか。

企業を支援していると、「もっと社員に当事者意識を持ってほしい」「もっとアイデアを出してほしい」といった声をよく耳にする。しかし、その前に「この組織はアイデアが出やすい仕組みになっているか」「挑戦が評価される制度になっているか」といったことを点検してみることも必要であろう。ウッドマンの三層モデルはその視点を与えてくれる。

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