2026-7-22 未知の世界をどう進むか
昨今イノベーションが叫ばれる背景には、我々を取り巻く環境が以前にも増して不透明になってきている、ということがある。例えば業界構造の急激な変化によって自社の強みが陳腐化し、事業の意義や進むべき方向性が揺らいでいる、あるいは地政学リスクやコロナ以降の行動変容によって事業存続の基盤が危うくなっている、といった状況である。実際、大企業も含め、多くの会社が自社の大きな方向性に確信を持てず、変化の必要性は感じながらも一歩を踏み出せずにいる。
平たく言えば、「変わらなきゃ、でもどっちに?」という気分の中で、企業が方向性を決めるための手がかりになるのが、ワイクの「センスメイキング理論」である。以前にも紹介したが、イノベーションの文脈で改めて取り上げたい。
センスメイキング理論のプロセスは3段階で説明される。
第一段階:環境の認知・・・冒頭で述べた「このままではまずい」と言う環境変化を察知することである。これがなければそもそも「腹落ち」をやり直す必要はない。
第二段階:解釈を揃える・・・環境の認識はさまざまな解釈が可能である。例えば売上が下がっている現状に対して、単なる景気循環という見方もあろうし、構造的な市場の変化という見方もできよう。正解はない。ずっと後になればわかるのかもしれないが、そんな余裕はない。ここはさまざまな解釈のオプションを減らし、足並みをそろえる必要がある。その時点で最も「確からしい」情報を選別し、それを意味付け、違う解釈をする人たちに「納得」「腹落ち」をしてもらわなければならない。ここがこの理論の肝である。
第三段階:イナクトメント・・・「行動」である。正しいかどうかわからないが「何となくの方向性」を決めたら、まず動いてみて反応を見る。得られた反応が新たな情報になり、次の解釈や腹落ちを生む。また、動いてみた結果として、例えば競合他社の出方が変わったり、顧客や仕入先の姿勢が変わったりといった形で、環境そのものが変化することもある。
センスメイキング理論はこの3つのプロセスが繰り返されるものと説明されている。お分かりの通り、「でも、どっちに?」を決めるのは第二段階である。ここでは自分たちが置かれた環境を解釈し、「だからこっちだ!」という理由を筋道立てて語ることのできるリーダーの存在が不可欠である。これができるのは、事業の方向性を決める権限のある人間に限られる。中小企業であれば経営者しかいないであろう。
繰り返すが、その時の決断が正しいかどうかは問題ではない。とにかく決めて、周囲を納得させることである。社員が皆、しっかり腹落ちしてことに当たれば、物事は成る。例え結果としては誤った判断をしていたとしても、何とかなってしまった事例がワイクの論文にはたくさん出てくる。信じられないかもしれないが、しかしこの話を信じる以外、他にどんな方法があるだろうか?
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