2026-7-28 パターナリズムと創造性

パターナリズムという言葉をご存じであろうか。強い立場にある者が、弱い立場ある者の利益のためだとして、本人の意思とは関係なく介入・干渉・支援することを言う(Wikipedia)。父権主義とか温情主義と訳される。一般的に東洋に強く見られる文化的特徴である。

周静は、このパターナリズムについても学説を展開している。結論から言うと、彼女は「一定のパターナリズムは創造性を高める場合がある」と論じている。西洋のイノベーション・マネジメントにはあまり出てこない発想である。

これは周以降の中国の研究だが、パターナリズムは以下の3つの要素に分解して考えるのが一般的になっている。

・権威主義・・・命令。服従。上下関係。

・慈愛・温情・・・部下や家族を守る。面倒を見る。成長を支援する。

・徳・器・・・人格。公正。規範。

中国企業を対象とした研究によって、このうち、「慈愛・温情」と「器・徳」はイノベーションにプラス、「権威主義」はマイナス、という結果が出ており、周の説を裏付けるものとなっている。つまり、「パターナリズム」とひとくくりにするのではなく、その中身が重要だ、ということである。

例えば西洋では、裁量や自由度が大きくなるほど創造性が上がると考えるのが一般的である。ところが東洋ではそういうことよりも、「尊敬する上司から期待されている」とか「恩に報いたい」といった要素のほうが仕事に対するモチベーションを上げたりする。「自由だからがんばる」ではなく「信頼されたからがんばる」である。思い当たる方も多いであろう。ここは西洋発のモチベーション理論ではあまり触れられてこなかった部分であり、周は文化による内発的動機づけの違いを初めて説明してみせたと言える。

一方で権威主義、「俺の言うことだけ聞いていればよい」というタイプになると、創造性にとってはマイナスである。理由は単純で、失敗を恐れるからである。つまりは探索よりも「怒られないこと」が目的になる。こちらも思い当たる読者がおられるかもしれない。

おそらく東洋では、日本も含めて、家父長的な文化そのものを捨てる必要はない。しかし「権威で支配する文化」はまずい。これを「信頼と徳で支える文化」に持っていくことがイノベーションを促すカギになるだろう。

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