2026-7-30 「捨てる」をルーティンにする
新しいことはやりたいが余裕がない・・・イノベーションの話になったとき、まず間違いなく経営者が口にするフレーズである。「余裕」とはいうのは、おカネの話のこともあるが、たいていは人の話である。新しいことに取り組むような、余分な人手はないと言うのである。そこそこの規模の会社でも聞く。中小企業ならなおさらである。
よくわかる。日本企業はこの30年間、基本的には成長よりも効率化、売上よりも利益に焦点を当てて経営を行ってきた。勝ち筋を見極め、そこに経営資源を集中して効率よく稼ぐことが唯一の正解だった。マーチ流に言えば「知の深化」のみ、「利き手だけの経営」である。だから今さら新しいことをやれと言われても、そんな余剰資源はない。気合や根性で何とかなるものでもない。現実問題としてどうすればよいだろうか。
ドラッカーが一つの答えを提起している。彼はイノベーションを行う第一段階の政策として、「廃棄の制度化」について述べている。すでに意味を持たなくなった活動を定期的に点検し、やめる。やめられないまでも、少なくともそれ以上の労力はかけないと決める。そうすることで、新しいことに挑戦できる最高の人材と資金を自由にするのだと。
これは筆者の経験上、極めて強力な示唆である。会社の中には、始めるときには意味があったとしても、今は何のためにやっているのかわからない仕事が必ずある。あるいは、仕事としては必要だが、過剰に手間をかけている仕事がある。スタッフ系の部門に多いが、ミスが起こるたびに管理項目を増やし、減らすことはしないから作業量は雪だるま式に増えている。こういう仕事に手をつけるのである。
会議や打ち合わせも然りである。習慣的に行っている数多くの会議のそれぞれについて、「目的とゴール」を書き出してみると良い。ぼんやりとしか書けないものがたくさんある。
報告書や資料作りもある。誰がどんな判断を下すための資料なのか、文字量や体裁はどの程度なら用を満たすのか、それぞれ上席に確認してみると良い。実はたいして見ていないとか、そこまで作り込んでもらわなくてもメモ程度のもので足りる、ということはよくある。議事録は作らずホワイトボードを写真に撮って共有するだけでいいかもしれない。臨場感がよみがえるし、書き手の主観が入らないからかえって使い勝手が良かったりする。
以前何度か書いたように、会社のルーティン業務は放っておくとどんどん自己増殖する。生産性のあまり高くない仕事で会社の中を埋め尽くす。だからこちらもルーティンをぶつけて拮抗させる。「捨てる」ルーティンである。
それでも今やっている仕事をやめることに抵抗がある経営者の方もおられるであろう。少し気が楽になる言葉を最後に贈ろう。同じドラッカーの言葉である。
「廃棄とは、あらゆる種類の組織が自らの健康を維持するために行っていることである。いかなる有機体といえども、老廃物を排泄しないものはない。さもなければ自家中毒を起こす」
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