2026-8-2 社長の仕事とは
社長の仕事とは何か、と問われれば、ほとんどの経営者は「会社を守ること」と答えるだろう。この答えはまったくもって正しい。会社には仕入先や顧客に対する責任がある。株主や地域社会に対する責任もある。納税して企業市民と正しく振舞わなければならないし、何より従業員の生活を守る責任がある。
会社を守るためにやらなければならないことは多い。日々の資金繰り、慢性的な人手不足への手当て、顧客からのクレーム対応、仕入先から来る値上げ要求への対応、数え上げればきりがない。中小企業の経営者にとって、今日を乗り切ることはそれ自体大仕事である。誰にも否定できない。
しかし、経営者にもう一つ問いを重ねると、意外な答えが返ってくる。「それではこのままでいいと思いますか」・・・「いや、いけないと思います」。
日々世の中の荒波にもまれている経営者はすでにわかっている。守るだけでは守り切れない時代がもう始まっていることを。お客様は変わる。技術は変わる。人の価値観は変わる。そして会社自身も年齢を重ねる。すべてが変わる中で、目の前の対応に追われる日々でいいはずがない。「わかっちゃいるんだけど・・・」というのが偽らざる本音であろう。
会社が存続しているのは、かつて何かがうまくいったからである。そのうまくいった何かを継承し、磨き上げてきたから今がある。その何かを大切にし、そこにこだわるのはごく自然なことである。しかし、その成功体験が、新しい挑戦を遠ざけてしまうことがある。これを経営学では「コンピテンシー・トラップ」と呼ぶ。
社長の本当の仕事は、「会社を守ること」ではない。世の中の変化に合わせて「会社が変わり続けられる状態をつくること」だと筆者は考えている。50年以上の間、多くの学者が研究に取り組んできた「イノベーション」とは、まさにこの、会社が変わるメカニズムを解き明かそうとするものに他ならない。
イノベーションとはアイデアや技術革新を意味する言葉ではない。一部の天才がひらめきを生み出すことでもない。市場の変化に合わせて、会社が少しずつ変化する仕組みである。
あなたの会社にとって、今後10年で「確実に起こる未来」はなんですか?
景気の予測ではない。「たぶんそうなる」でもない。少子高齢化、デジタル化、環境規制、後継者不足・・・。すでに始まっていて、止めることのできない変化である。ぜひ三つ、紙に書き出してみてほしい。その三つは、あなたの会社がこれから取り組むべきイノベーションの出発点になるはずである。
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