2026-8-5 会社の未来は、社長一人では作れない

前回は、外へ出て新しい刺激を受けようと言う話をした。すぐには難しいとしても、徐々に新しいアイデアも浮かぶようになるだろう。「こんな商品はどうだろう」「こんなお客様にも売れるかもしれない」・・・。

さて、次はどうしよう。社長一人では会社は変えられない。

次のステップは社員を巻き込むことである。方法は、「社員との対話」しかない。誤解しないでいただきたいのだが、自分の考えの「説明」ではない。双方向の「対話」である。社員から学ぶ、と言い換えても良い。

どうせうちの社員など何も考えていない、と思われるかもしれない。それは否定できない面がある。目の前の仕事、お客様、仕入先・・・。帰れば家庭の用事もある。日々の生活で手いっぱいで、会社の行く末など考えている暇はない。しかし思い出してみてほしい。それは、少し前までのあなた自身の姿ではなかったか。責めることはできない。

社員は未来は考えていないかもしれない。しかし、現場は毎日見ている。お客様の不満、仕事の無駄、小さな改善項目、市場の変化・・・。それらは社長には見えない情報である。だから社員との対話は、現場の「身体知」を集めるために必須の経営活動なのである。

今、社長には未来の構想がある。社員には現場の身体知がある。どちらかだけでは足りない。この二つを、対話の中でぶつける。そこから「それならこうすればできる」「そんな見方があったのか」という新しい気づきが生まれる。イノベーションとは、天才のひらめきではなく、こうした対話の積み重ねから生まれる。説明の仕方は違うが、ワイクも、野中も、ISOも同じことを言っている。

社員の一人にこう聞いてみてほしい。「もしあなたが社長なら、会社の何を変える?」

15分でいい。反論せず、最後まで聞いてみてほしい。相手がもう話し尽くした、という顔になったら、そこで初めて自分のアイデアをゆっくり語り始めるといい。そして、相手の意見も聞いてほしい。

コンサルティングの教科書にはよく、「社長のビジョンを浸透させることが大切」と書いてある。否定はしないが少しもったいない。社長の仮説を現場にぶつけ、現場の知恵をまた経営に返す。その往復の中で答えを磨いていく。そういうやり方のほうが、新しいチャレンジの成功確率も、社員の腹落ち感も、段違いに高まると思う。