2026-8-10 実は難しいSWOT分析

前回まで、STEEPで社会の変化を捉え、3Cのレンズに切り替えて顧客・競合・自社との関係を考えてきた。次はここまで集めてきた情報を整理して具体的な戦略につなげたい。そこで使えるのがSWOT分析である。

SWOTは「強み」「弱み」「機会」「脅威」という4つのマスに情報を整理する、よく知られたフレームワークである。しかし、実際にやってみるとかなり難しい。たいていの中小企業診断士はSWOTを使うが、正直あまり出来のよくないものも少なくない。まずは「簡単な形をした、とても難しいフレームワーク」という認識を持っていただきたい。

前回と同じ例で考えてみよう。環境規制が強化されるというニュースがあったとする。対応のために設備投資や事務負担が増える会社にとっては、脅威に見える。一方、環境対応技術を持つ会社にとっては、新しい市場が生まれる機会かもしれない。競合企業が脱落することで、むしろ有利になる可能性もある。

つまり、外部環境の変化が最初から「機会」や「脅威」という名札を付けて登場してくるわけではない。機会か脅威かは、出来事そのものではなく、自社との関係、すなわち内部者の「知覚」によって決まる。しかも、第一印象では脅威に見えたものが、議論するうちに機会に変わることも珍しくない。

内部環境の分析も簡単ではない。例えば、ある会社が「当社は各工程で厳密な検査を行っている」と説明したとする。これは「強み」だろうか。

高い品質保証を求める顧客に選ばれ、価格にも反映できているなら強みと言える。しかし、顧客がそこまでの品質を求めていないなら、それは過剰品質かもしれない。競合企業も同じ検査をしているなら、業界の標準に過ぎない。もし検査にコストをかけすぎて利益につながっていないなら「弱み」の側面すらある。

したがって、強みとは単なる「得意なこと」ではない。顧客にとって価値があり、競合と比べて意味を持ち、戦略に使うことができる能力である。また、強みとは絶対的なものでもなく、顧客、競合、市場、時代との関係で決まるものである。だからこそ、先に3Cのレンズで考えておく必要がある。

支援者としての限界もある。我々のような外部の支援者は、業界情報や他社事例、分析の視点を提供できる。しかし、「厳密な検査」が競争力の源泉なのか、現場に染みついた過剰品質なのかを、短時間のヒアリングだけで見極めるのは難しい。だから誠実な支援者は「正解」を語らない。適切な「問い」を投げる。

「それは顧客から評価されていますか?」「その品質に顧客はお金を払ってくれていますか?」「競合企業も同じことをしていませんか?」・・・。

社内は身体知の宝庫である。それも職種や立場によって異なる知識や感覚を持っている。営業担当者は顧客が自社製品のどこを評価しているか知っているし、製造担当者は品質を維持する難しさや、現場の無駄を知っている。経理担当者はそれが利益につながっているかを知っている。それぞれが異なる身体知を持っているから、それぞれが表に出てくるよう、繰り返し問うのである。これによって強みや弱みの客観性はある程度担保できる。

このように、SWOT分析は難しい。しかし、だからといってSWOTが使えないわけではない。難しさを理解して使いさえすれば、むしろ非常に便利である。次回はその話をしたい。

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