2026-8-11 SWOTは分析でなく対話のツール
SWOTでは、「内部環境と外部環境」「現在持っている能力と将来起こりうる変化」「有利に働く要因と不利に働く要因」といった要素を一枚に並べて眺めることができる。これが最大のメリットである。文書や報告書の中に情報がバラバラに置かれていると、それぞれを個別に認識するだけで終わってしまう。だが、4つのマスとして目の前に置くと、意識が自然に項目どうしのつながりへ向かう。
「この強みを、この機会に使えないか」「この弱みを放置すると、この脅威が致命傷にならないか」「この脅威に対応するために、別の強みを育てられないか」「この弱みがあるからこそ、どこか外部と組めないか」・・・。こうした思考が、「情報の整理」を「戦略の方向性」に変えるのである。
したがって、SWOTの本質は、4つのマスをきれいに埋めることではない。並べられた情報を「結びつける」ことにある。例えば、「自社の開発力」という強みと、「環境対応需要の拡大」という機会をつなげれば、新しい環境配慮型商品の開発という戦略が思い浮かぶ。「営業人員の不足」という弱みと「参入企業増加」という脅威をつなげれば、販売チャネルや外部パートナーの見直しが視野に入る。一覧になった項目を眺めながら「この二つはつながるのではないか」と感じること。それが身体知に裏打ちされたインスピレーションである。SWOTは、そのインスピレーションが起こりやすいように情報を配置する、視覚的な思考の道具だと位置づけることができる。
前回も述べたように、同じ項目を見ても営業、製造、開発、管理部門、そして社長、それぞれに意味づけが違う。「これは強みだ」「いや、今や弱みになりつつある」「現在は弱みだが、この機会と結びつければ強みになりうる」・・・こうした対話を通じて、会社としての見方を作っていく。意見が割れることは失敗ではない。むしろその食い違いに重要な経営課題が隠れている。むりやり「一番正しそうな」統一見解にまとめる必要もない。さんざん議論してきた人間の腹に落ちれば、全員の身体知にフィットすれば、それがその会社にとっての正しい方向性である。
さあ、やってみてほしい。これまでのSTEEPと3C分析をもとに、自社の強み・弱み・機会・脅威をいくつか付箋に書き出してみよう。それを4象限に並べてみて、気になる二つの項目を一本の線で結んでみてほしい。あなたは社員になぜその二つが気になったのかを説明する。そこから意見を聞いてみてほしい。その結びつきをどう思うか、そこに商売の可能性はあるか、別の人ならどこに線を引くか・・・。きれいな図を作る必要はない。むしろ乱雑な付箋や色とりどりが交差した線のほうがよい発想を生む。肝心なことは、その紙、その線から戦略仮説をつくることができるかどうかである。
SWOTは分析のためのツールではない。会社の未来につながる一本の線を見つけるための「地図」なのである。そして、その線は社長一人では見つけられない。共に考え、後には一緒に動いてくれる社員たちの存在が不可欠である。
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