2016-8-16 一人でやろうとしない

前回は「手中の鳥」という話をした。自分が持っている「誰を知っているか」「何を知っているか」「何ができるか」を棚卸しして、小さく始めてみようと。しかし、実際に動き始めるといろいろな壁に突き当たる。技術がない。販売先がない。デザインができない。設備がない。専門知識がない・・・。「ここから先は、ウチでは無理だな」になってしまうことが多いし、むしろそれが普通である。

しかし、ここで「だからできない」と考える必要はない。持っていないなら、持っている人と組めばいい。これがエフェクチュエーションでいう「クレージーキルト」の考え方である。

これはいわゆる「キルティング」、端切れの布をつなぎ合わせて一枚の布を作っていくアレをメタファーにしている。「クレージー」であるから、素材も色も柄も違う端切れが縫い合わさったサイケなツギハギのイメージである。事業で言うと、業界も専門性も人脈も違う人に自分の構想を話し、「一枚噛んでもいいよ」という人を少しずつ巻き込んでいくやり方になる。一般論的な「人脈」というよりは、「それ、面白そう」「うちならここを手伝えるよ」「それならこんな人を知ってるよ」というように、志が合うというか、一緒に動いてくれる人を増やすことが主眼になる。

このクレージーキルトもまた、中小企業のほうが圧倒的に有利な手法である。大企業だと、取引先に何か持ちかけようとすれば、目的は?予算は?担当者は?といった話が必ず先に出てくる。社内決済が必要になる場合もあるだろう。しかし、中小企業なら意思決定は早い。社長同士が話して「面白そうやな、ちょっと一緒にやってみようか」から始められる。大企業ほど経営資源は持っていないが、つながる速さ、決める速さでは勝てる。

他の人とつながるのは、自社に足りないものを埋めてもらうという意味だけにとどまらない。「商品が決まったので販売会社を探す」なら普通の提携であるが、クレージーキルトの示唆するところはもう少し深い。例えば、販売会社に相談したら、「これ、企業向けじゃなくて、一般消費者向けのほうがおもしろくないですか?」と言われた。あるいは、別の会社からは「商品として売るより、サービスに組み込んだほうが良いかもしれない」と助言された。考えてみればそれもアリ。こうして、ビジネス自体が最初に考えていた違う形のものになっていく。クレージーキルトはこうした柔軟性、新しいピースが加わることによる完成形の変化、といった概念も含んでいる。

だから大切なことは、こうした「想定外」を怖がらないことである。人とつながったことで生じた変化を、「当初の計画と違う」と言って元に戻そうとしてはいけない。むしろ「こっちのほうが面白いかもしれない」とポジティブに捉えること。これがクレージーキルトの面白さである。そして、この融通無碍な戦術変更もまた、中小企業の持ち味を生かせる部分である。

今かが得ているアイデアを、今週一人だけ誰かに話してみてほしい。

協力してくれと頼む必要はない。「こんなことを考えているんだけど、どう思う」でいい。できれば、自分とは少し違うものを持っている人に話してみる。そして、自分のアイデアを説明した後、相手が何を返してくるのかを面白がってほしい。

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