2026-8-19 まだ飛び続けられるか?
二つ目のコントロール、パイロットが見なければならないもう一つの計器の話である。それは燃料計。目的地に向かっているからといって、燃料を使い切っていいわけではない。以前、「許容可能な損失」について書いた。新しいことを始めるときには、「いくらまでなら使えるか」「何か月なら試せるか」「何人までなら投入できるか」を先に決めるのだと。成功したときにいくら儲かるかではなく、失敗してもここまでなら会社は大丈夫、というところからやることを決める。
ところが、新しいことに目がありそうだ、となると、ついこのリミットを忘れる。忘れないまでも、「もうちょっと頑張れば展開が変わる」と思い込んで、人や資金を追加する。言い方は悪いが、素人のばくちと同じである。ここまでつぎ込んだ時間と労力が惜しくなったりする。
人のことは言えない。前回の「海外事業立ち上げ時の先行投資」も同じ話である。未来の成功を理由に、現在の損失を際限なく許してはいけない。
新しいことを始めた経営者には、常に確認してほしい二つの計器がある。
・方位計・・・目的地に近づいているか(やるべきか)
・燃料計・・・まだ安全に飛び続けられるか(許容可能な損失か)
繰り返すが、計画、あるいは想定通りかどうかはそれほど重要ではない。むしろそこから外れることを恐れず、状況に合わせて航路を変えればいい。ただし、この二つの計器からは目を離さない。
エフェクチュエーションに関するよくある誤解が「行き当たりばったりではないか」というものである。確かに、「まずやってみる」「手持ちのものから始める」「偶然を利用する」と聞くと、そんな感じも受ける。しかし、本当はそうではない。目的地という「方向のコントロール」と、許容可能な損失という「リスクのコントロール」。この二つを効かせながら、航路については柔軟でいる。むしろ、かなり規律のある考え方である。
今動いている案件を思い浮かべ、次の二つの問いを投げかけてほしい。
「これは、本当に自分達が行きたい方向に向かっているか」
「もしこの件がうまくいかなかったとして、どこまでなら失って大丈夫か」
この二つに答えられれば、航路はもっと自由に変えて良い。
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