2026-8-22 「新しいことをやれ」というだけでは、誰も動かない
中小企業の経営者と話していると、よく聞く言葉がある。「社員から新しいアイデアが出てこない」「言われたことしかやらない」「もっと自分で考えてほしい」・・・。それはそうであろう。これまでは経営者自身が新しいことに目を向けてこなかったのだから。社長がやれていないことを社員に求めるのは酷というものである。
ここまでの話で、新しい機会に気づき、小さく試し、状況に応じて柔軟に動く方法について考えてきた。これはいい。自分もやるが、社員にもやってもらおう、と社長が朝礼で「これからは失敗を恐れず、新しいことに挑戦しよう!」と熱く語ったとする。さて、社員は動き始めるだろうか・・・。たぶん、ことはそれほど簡単ではない。
当たり前のことだが、社員にとって、会社で働くというのはゲームでも冒険でもない。生活の糧である。毎日の仕事、納期、ノルマ、指示された仕事があり、それをきちんとこなせば給料がもらえる。一方で、社長が言うからと新しいことを始めれば仕事は増える。リスクも増える。成功しても自分の評価が上がるとは限らないし、失敗すればそれこそ袋叩きになりかねない。どう考えても「余計なことはせず、今の仕事をきちんとやっておこう」というほうが合理的である。
「新しいことをやれ」と言うのはいい。やってもらわなければ会社は停滞する。しかし、自分の会社が下記のようになっていないか、一度自問してみてほしい。
・これまでの業務は減らさない。通常業務が滞ったりすれば叱られる。
・評価はあくまで今期の売上と利益である。新しいことはうまくいったときのみ加点される。
・新しいことに使う費用や時間には厳しいチェックが入る。その上、失敗したら叱られる。
こうなると社員が受け取るメッセージは明確である。「新しいことをやれ。ただし金も時間も使うな。通常業務もしっかりやれ。失敗は許さない」・・・。社員は社長のうわべの言葉より、会社の実態を見て行動するものである。
これを意識が低いとか、最近の若い者はとか、人のせいにしてはならない。まず経営者自身が問うべきである。「この会社は、新しいことをやる人が報われる仕組みになっているか?」と。時間、予算、権限、組織、評価、昇給・・・。社員の行動を決めているのはこれらの具体である。掛け声ではない。

