2026-8-24 新しいことをやる時間は、誰が作るのか①
イノベーションの必要性はわかっている。新規開拓、新市場、新商品、新しい取り組み・・・会社の将来を考えればどれもやらなければならない。しかし、社員には今日やらなければならない仕事がある。既存顧客への対応、見積り、納期管理、トラブル対応、社内の会議や報告・・・。「新しいことを考えてくれ」と言われても、どうしても目の前の仕事が優先される。これは「社員の意識」の問題であろうか。
違うと思う。営業マンだったころ、筆者も何度となく「新規開拓をしろ」「新しい市場を探せ」と言われた。言われなくても、自分自身でもその必要性は理解していた。「今のお客様だけを相手にしていては先がない」と感じていた。なんとか時間を見つけて探索活動に取り掛からなければと焦っていた。
しかし、既存のお客様からは毎日、いやと言うほど仕事がやってくる。商談もある。問い合わせもある。納期チェックは怠れないし、クレームがあれば何を置いても駆けつけなければならない。新規開拓より、どうしてもそちらを先にやることになる。それでも新しいことをやろうとすると、どうなったか。
・・・既存の仕事を残業や土日でやることになった。振り返れば、これは「時間を作った」のではない。休養やリフレッシュに充てるはずだった自分の時間をつぶして、仕事に追加投入していただけである。
考えてみれば当然の話である。既存顧客への対応には目に見える相手がいる。今日と言わなくても、期限までにやらなければ困る人がいる。やれば売上につながるし、やらなければクレームにもなる。一方、新市場の探索は今日やらなくても、明日すぐ困る人はいない。しかも、そのために使った時間が必ず成果を生む保証もない。であれば、社員が既存業務を優先するのはむしろ合理的である。ここで「もっと危機感を持て」「時間は自分で作れ」と言ったところで、問題は何も解決しない。前回書いたように、人の気持ちを変えようとする前に、環境や仕組みを変える必要があるのである。そしてそれは、社員ではなく経営者の仕事である。

