2026-8-27 新しい仕事を任せるなら、今の仕事を減らす

「できる人」の仕事の、例えば20%を新しい仕事に振り向けてもらうとする。ここで一番やってはいけないのが、「既存業務100+新しい仕事20=120」である。「新規事業よろしく。今までの仕事もしっかり頼むよ」では単なる仕事の上乗せである。以前にも述べたように、これをやると優秀な人材ほど消耗していく。

目指す姿は、「既存業務80+新しい仕事20=100」である。その人を新規事業にアサインするなら、同時に既存事業を20減らさなければならない。例えば「担当を移す」「会議を減らす」「部下に任せる」「思い切ってその仕事をやめる」といったことである。まずは「人を決めることと、その人の仕事を減らすことはセット」であるということを肝に銘じてほしい。

もちろん、既存業務を20減らせば、何の影響もないわけではない。だからこそマネジメントのできる人を選ぶ意味がある。そういう人ならインプットを20減らしても、アウトプットは20減らない工夫をしてくれる。例えば「仕事の優先順位を整理する」とか「仕事のやり方を変える」、「部下に目配りしながらある部分を任せる」といったやり方で、既存事業へのマイナスをできるだけ小さくしてくれる。

社内で実績のある人が担当することには、別のメリットもある。それは「あの人がやるなら」と周囲が納得しやすいことである。新しい取り組みは、すぐには成果が見えないもの。だから普通は、既存事業で稼いでいる部署から文句が出る。これを抑えるためには経営者の「これは会社として大事な仕事だ」という意思表示が大事になってくるのだが、既存事業で実績を出している人が担当していれば、その経営者の労力はかなり軽減される。「あの人にやらせている」こと自体が、会社にとって欠かせない取り組みだというメッセージになっているからである。

ここまでやっても、問題はまだある。というか、実際にはここからが一番難しい。最初にその人の業務を80+20で設計したはずなのに、忙しくなってくるとこれが90+10になる。「トラブルが起きた」「月末の数字が足りない」「この会議だけ出てほしい」・・・実力者だからあちこちから声がかかるし、本人も責任感が強いから放ってはおけない。そして気がつけば95+5、最後には100+0になる。せっかく作った「未来のための時間」が、また今日のために食べられてしまう。だから、まだ経営者は目が離せない。「彼/彼女に任せたから、あとはよろしく」というわけにはいかないのである。

「新しい方に、ちゃんと20使えてる?」と、ときどき確認しなければならない。もし使えていないなら、本人を責めるのではなく、何がもともとの20を喰っているのかを一緒に確認する。必要なら、もう一度既存業務を剥がして設計し直す。周囲にも徹底する。

既存事業から完全に切り離そうとする必要はない。もともと無理な話だし、既存事業の皮膚感覚があればこそ、新規事業にそれが生きるということもある。大切なのは既存事業から切り離すことではなく、既存事業に埋没させないこと、なのだと思う。

未来のために作った時間を誰に託すかを考えてみよう。そして、その人の今の仕事から、何を減らすかを一つ決めてほしい

そして、一度空けたその時間を、また今日の仕事で埋めない。そこまでが経営者の仕事である。

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