2026-8-29 目的に近づくために、ものさしを変えていく

サラリーマン時代に、ペット用品の卸売を拡販しようとしたことがある。目的は新しいペットショップとの取引を増やすこと。最初に考えたのは「まず、多くの店に知ってもらおう」という至極単純なことである。ペットショップを探して電話をかけ、メールを送った。いわば絨毯爆撃である。このときのKSF仮説は「接触量」。KPIは電話やメールの件数、反応数、商談に結び付いた件数、ということになる。ところがこれが大外れ。全く反応がない。

普通の進捗管理なら、「目標件数100件に対して60件しか電話をしていない。来月はもっと頑張ろう」となるかもしれない。しかし、こうした新しい取り組みでは、そういうやり方は効果が薄い。このケースではたまたま、既存顧客から紹介を受けたいくつかのペットショップで成約につながったことをきっかけに、「紹介営業」に切り替えた。すると明らかに反応率が上がった。ここで、どうも「接触量」ではなく「信頼」が重要らしい、とわかったのである。

ところが、反応があった紹介先を自社のウェブサイトに誘導し注文を取ろうとするのだが、それほど売れない。信頼だけでも足りないようだ。そこでこんどは社有車を用意し、商品を積んで、実際に店を回った。実物を見てもらいながら商談する。少量をその場で現金決済し、商品を置いてくる。すると、途端に売れ始めた。そこでようやく、「この商売は『信頼×現物』なんだ」と気がついた。

この間「新規顧客を開拓する」という目的は変わっていない。変わったのは、そこへ至る道筋である。KSFの仮説が「接触量→ 信頼→ 信頼×現物」と変わっている。当然KPI も変わっていて、当初は電話件数だったものが紹介件数に、最後には訪問件数や成約率になっている。

結果だけ聞けば、「そりゃあ現物を持っていった方が売れるに決まっている」と思うかもしれない。しかし、それは後付けの理屈だと思う。電話作戦でも一定数取れたかもしれない。その後も、例えばウェブだけでも売れたかもしれないし、価格や商品構成にネックがあったのかもしれない。少なくとも当時の私には、やってみなければわからないことだった。だから、新しいことに取り組むときには、最初から正しいKSFやKPIを見つけようとしてはいけない。最初に設定した仮説にこだわり過ぎてもいけない。

まず仮説を置く。小さくやってみる。結果を見る。違ったら変える。またやってみる。イノベーションを具現化するには、高速でPDCAを回すこうしたやり方が向いているように思う。

この事例から言いたいことは、「目的に近づくために、ものさしそのものを変えていく」ということである。PDCAを回すとき、「Pそのもの」も疑う。と言うか、むしろ最初のPは 違っている方が普通。これが新しい仕事を評価するときの大きな特徴だと思っている。

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