2026-8-30 新しい仕事を既存のフォーマットで評価しない

人事評価のとき、全社共通の評価フォーマットを使う会社は多いだろう。売上目標いくら、達成率何パーセント、粗利はいくら、クレームは何件・・・。そこに記載すべきKPIはあらかじめ決められており、評価者はそれぞれの達成度に従って部下を評価する。誰であろうと共通のものさしで測定する、非常に公平性の高いシステムである。時系列でものさしが変わらないから、継続的な改善を行うための指標としても使い勝手が良い。

しかし、新しい仕事まで同じ様式にはめこむと、おかしなことが起きる。期初に決めたKPIを、半年後や1年後まで守らなければならなくなる。それでは、仮説が間違っているとわかっても、担当者はものさしを変えることができない。だから、こと新しい仕事をする人の評価に関しては、全社一律の定型フォーマットから、いったん外して考えることをお勧めしている。

もちろん、目的は明確にしておく。これはコロコロ変えるものではない。しかし、KSFとKPIは仮置きする。そして、必要なら変える。こういう、既存事業とは異なる評価の仕組みが必要になるだろうと思っている。参考までに、筆者が管理職時代によく使った手を紹介しておく。大きな目的だけは記載するが、具体的な手法や達成時期については「仮置き」としておく。その代わりに「いついつに面談して見直す」と注記しておくのである。

もう一つ重要なことがある。それは評価の「頻度」である。新しい仕事では、半年に一度、あるいは年に数回の進捗管理面談ではとても足りない。担当者から「電話は全然ダメです」「紹介だと反応が違います」「でもウェブ では売れません」という情報が日常的に上がってくる必要がある。そこで経営者も「じゃあ電話件数はもう追わなくてもいい」「次は紹介から商談の転換率を見よう」と、一緒に考えることになる。日常的なコミュニケーションそのものを、仮説検証と評価の場にしなければならない。

もちろん、「KPIはどんどん変えていい」だけでは評価制度にならない。都合が悪くなるたびに目標を変えていいなら「何でもアリ」になってしまう。だから、ものさしを変えたら、その都度記録する。定例会議や日々の打合わせに評価シートを持参してもらい、例えば簡単に

「当初の仮説:接触量 → 結果:極めて反応薄 → 新しい仮設:既存顧客からの紹介が有効 → KPI変更:電話件数から紹介件数」

というふうに残しておく。立派な報告書である必要はなく、「なぜこのものさしを捨てて、新しいものさしに変えたのか」が後でわかればよい。このこまめな作業が、ただでさえ難度の高い仕事を担当して不安に駆られている社員に安心感を与える。

そして実は、これは単なる評価記録でもなく、会社に蓄積される学習の記録とも言えるものになっているのである。こういうデータが経営者のもとにたまっていけば、その会社は新しい仕事に関して経験値が上がっていく。それは自社の商売に関する個別ノウハウということもあるが、もっと大きいのは「こういうやり方はうまくいく」「こうだとうまくいかない」といった自社固有のやり方がわかってくることである。