2026-9-1 賃上げできない会社は、つぶれてもいい? 

2026年4月に発表された「2026年度版中小企業白書・小規模企業白書」には、のっけから挑戦的な言葉が並んでいる。いわく「現状維持は最大のリスク」「経営者の能力の差が明暗を分ける」「『稼ぐ力』を高め『強い中小企業』へと成長」・・・。数年前のコロナ期に緊急避難的な措置を連発し、「全ての企業を救う」に近いことを言っていた同じ中小企業庁の物言いとは思えない。

中小企業を「強く」するために国がやろうとしていることのまず第一は「賃上げ」である。多くの経営者にとっては「何だそれ?」であろう。ただでさえ厳しい経営環境の中、従業員の給料を上げれば会社の体力はますます削られる。国は俺たちにつぶれろと言うのか・・・。

この思いは、半分正しく、しかし半分間違っている。結論から言うと、国は「従業員の給料も満足に上げられない会社はつぶれてもいい」と本気で思っている。そのかわり、「従来のやり方を変え、稼ぎを増やそうとする会社は手厚くサポートする」意思を鮮明にしている。まさに「自ら助くるものを助く」である。

国のロジックは三段論法的で少しわかりにくい。筆者なりの言葉で一つずつ説明しよう。

1.個人消費を回復させたい

日本の経済を活性化させるには、30年に及ぶデフレですっかり縮んでしまった個人消費マインドを回復させなければならない。何せGDPの約半分は個人消費である。そのためには、賃上げ分から物価上昇分を引いた「実質賃金」を継続的にプラスにしなければならない。実質的に給料が目減りする状況では、いくら買い物をしろとたきつけられても財布のひもは緩まない。

2.消費者物価上昇は避けられない

日本はまだましだが、世界的にはかなり高いレベルでインフレが進んでいる。原材料や燃料の供給制約、地政学的なリスクへの備えなどネガティブな要因もあるが、全体としては途上国の成長などを背景とした「世界経済の基礎体温」が上がっている、という理解でよい。足元ではここに円安要因なども加わり、国内の消費者物価は今後も継続的に上昇することが避けられない。

3.なので苦しくても賃上げをしてもらわなければ困る

企業側にも「給料がよそに見劣りすると人が採れない」という弱みがある。これもしばらく解消しそうもないから、上げざるを得ない。

ざっくり言うと、国がいの一番に賃上げに取り組むのにはこういう背景がある。経団連など財界の理解もあり、実際に2023年度あたりから賃上げ率はかなり高い伸びを示している。また、国と地方のすり合わせによって決められる最低賃金の全国平均も、ここ数年は急激に伸びており、2025年度にはすべての都道府県で時給1,000円を超えた(筆者がアルバイトをしていたころとは様変わりである)。以下の図は、どちらも2026年度中小企業白書・小規模白書からの抜粋である。

何となく世間もそういう空気だし、従業員も期待しているのでウチも上げた。じゃあつぎはどうしろというのか。白書は一応の処方箋を示している。次回説明したい。