2026-9-3 労働投入量を減らすには
前回述べた生産性向上の分数を筆者なりに分解すると以下のようになる。今回はこの計算式の「分母」側について説明しよう。

再三言及した通り、③の「賃上げ・待遇改善」は今やあらゆる企業にとって不可避である。そうしなければ採れない、というのはもちろんだが、たとえ採用できたとしても今の時代、人材投資を継続しなければ従業員は定着しない。賃金だけ上げておけばそれでよい、ということでもないのである。
その「人材投資」だが、ほとんどの中小企業はOJT、つまり先輩の指導による教育に頼っているのが実情であろう。なるほど、手っ取り早く一人前にするには最も効率の良いやり方に見える。ところが同じ白書の中に、実際にはOFF-JT(実務を離れた研修)に取り組んだ企業のほうが儲け(付加価値額)が増えた、というデータがある。会社によって事情は異なるだろうが、時には職場を離れて理論や心構えを学ぶというのも選択肢に入れて良さそうである。ちなみに、中小企業が従業員一人にかける年間研修費(OFF-JT費用)は約9,000円、大企業は22,000円である。この金額が多いか少ないかの感じ方は人それぞれだろうが、個人的には「非常に少ない」と感じる。
この「賃上げ・待遇改善」に関わる国の支援策のうち代表的なものは「賃上げ促進税制」である。これは、基準を満たす賃上げを行った企業に対して法人税を優遇する制度で、大企業向けは今年の3月に終了したが、中小企業向けにはまだ継続中である。また、昔からある「人材開発支援助成金」は、OFF-JTをやってみたい企業にとっては使いやすい制度である。
④の効率化投資。人件費単価は黙っていても増えるわけだから、他のコストを減らす努力をする必要がある。これにはいくつかのパターンがあって、一番わかりやすいのは「一人当たりの給料は上げるが、人を減らす」というやり方である。業界内の価格競争がし烈であるとか、市場の成長率があまり高くない、といった環境であればまっさきに検討すべき施策で、「人がやっていたことを機械にやらせる」か、「余計な仕事を減らす・やめる」ということになる。省エネ設備を導入すればエネルギーコストの削減も期待できる。こうした効率化に向けた国の支援の代表例としては「省力化投資補助金」や「デジタル化・AI導入補助金」などが挙げられる。国としては、企業が設備投資をしてくれればお金が回り、経済が活性化するということで、この手の支援策は外郭団体や地方自治体も含めてたくさんある。
もうひとつ、より理想的なのは「人も増やすが、省力・省エネ投資もしてそれ以上の効果をもたらす」というパターンで、成長期にある企業なら選択肢に入る。ただしこのパターンは分子側、すなわち付加価値額の増加も伴わないと実際にはなかなか難しい。

