2025-10-26 組織変革の実施

組織変革を実施していくフェイズでは、実務的にはシャインの唱える三層構造を順に追っていくことになる。まず組織構造や社内行事といった「人工物」を変えることから始め、次に行動指針やスローガンといった「標榜されている価値観」を変える。こうした目に見える部分からアプローチしていくことで、組織が当たり前としている信念や価値観、すなわち「基本的仮定」に揺さぶりをかけていくのである。普段と変わらない日常では変革の必要性が認識されにくいため、その時々に直面している脅威や課題をことさらに強調して危機感をあおる、といった手法もしばしば採用される。

こうした移行過程においては、既に述べたように、さまざまな理由で「変革への抵抗」が生じる。変化に起因する組織内の新たな勢力争い、といったことも起きるかもしれない。そこまで行かなくても組織内の戸惑いや混乱は避けがたいであろう。そこで必要になるのがあきらめず、結果が出るまでやりきる「トップの覚悟」である。トップが本気かどうかは部下ならば一目でわかる。本気だと感じれば賛同者は必ず現れる。

組織変革を企図するトップは、それを自ら引っ張るにせよ、特定の個人やチームに任せるにせよ、長く険しい道のりを覚悟しなければならない。一朝一夕にできることではないし、うんざりするほどたくさんの厄介ごとに取り組む羽目にもなる。それでもやると決めたのであれば、中途半端にやめてはならない。それでは変革が成就しないばかりか、それなりに機能していた既存の組織力すら失うことになりかねない。